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【厚生年金の計算方法】もらえる年金受給額と支払う保険料はどう決まる?FPが解説

老後生活資金として頼りにしたい厚生年金。毎月の給料やボーナスから引かれる保険料や、将来受給できる年金額がどのように決まるのか知っていますか?厚生年金保険料と老齢厚生年金額の計算方法について解説します。

最終更新日:2021年1月28日

この記事の早わかり要約 読了目安時間:

給与等から引かれる厚生年金保険料は収入額で決まる

厚生年金の加入者が受け取る年金=老齢基礎年金+老齢厚生年金

年金の受給見込み額は誕生月に送られてくる、ねんきん定期便で確認できる

目次

厚生年金とは

厚生年金は、日本の会社に勤める人や公務員が加入する公的年金のことをいいます。
公的年金には自営業者などが加入する国民年金がありますが、厚生年金は国民年金に上乗せされる年金です。厚生年金に加入している人は自動的に国民年金にも加入していることになります。

パートやアルバイトの人でも、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数、雇用期間、賃金月額など、一定の条件を満たしていれば厚生年金に加入します。

少子高齢化が進行するなか、将来の年金受給を不安に思う人も少なくないようですが、老齢厚生年金は老後の大切な収入源です。現役時代に引かれる保険料や将来もらう年金の仕組みについて、ざっくりとでも理解を高め、老後の安心を高めていきたいですね。

厚生年金の保険料はどう決まる?

国民年金の保険料が年齢や収入に関係なく、すべての人に一律なのに対し、厚生年金の保険料は収入額で決まります。一般的に、収入が多くなるほど、保険料が上がっていく仕組みです。

はっきりとした金額は覚えてなくても、新入社員の頃から徐々に、引かれる厚生年金保険料の金額が上がっていることを実感している人も多いはず。

少し詳しく言うと、厚生年金保険料は給与額の少ないものから大きいものへと段階的に分けられた32等級の「標準報酬月額」に18.3%の保険料率を掛けた金額として計算されます。こうして算出された金額を半分ずつ、雇用主と従業員本人で払います。

たとえば、標準報酬月額が30万円の場合、厚生年金保険料の金額は30万円に18.3%をかけた5万4,900円となりますが、従業員が自分で負担する分、つまり給料から引かれる金額は2万7,450円となります。

標準報酬月額の決まり方

厚生年金保険料の計算基準となる標準報酬月額についても、将来の年金額を知るうえで知っておきたい項目です。

標準報酬月額は、給与額に応じて32等級に分けられる旨上述しましたが、このときの給与額(報酬月額と言います)は基本給のほか、役付手当、通勤手当、残業手当などの各種手当を加えた1カ月の総支給額を言います。

ただし、出張手当などの臨時に支払われるものや3カ月を超える期間ごとに受ける賞与等は除きます。

従業員個々人の標準報酬月額は、毎年1回見直され、4月、5月、6月の3カ月間の平均額で決まります。ちなみに標準報酬月額は健康保険料の算出にも用いられ、標準報酬月額の決まり方は同様です。

社会保険料が上がるため4月~6月の間に残業を少なくした方がいいという話を聞いたことがある人もいるかもしれません。それはこのような厚生年金保険料および健康保険料の算出サイクルが関係しているのです。

標準賞与額の決まり方

標準賞与額とは、賞与(ボーナス等)から引かれる厚生年金保険料を決めるための基準となるもので、実際の賞与額(税引き前)から1,000円未満の端数を切り捨てた金額です。たとえば、1回の賞与額(税引き前)が38万7,500円だとすると、標準賞与額は38万7,000円になります。
標準賞与額は 支給1回につき150万円が上限となります。

なお、会社によっては支給名目が異なる場合があります。たとえば、賞与、ボーナス、期末手当、夏季(冬季)手当、繁忙手当、etc……。このように名目(名称)が違っても、労働者が労働の対価として受けるもののうち、年3回以下の回数で支給されるものが対象となります。

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厚生年金の受給額の計算方法は?

会社員など厚生年金に加入している人は、自営業やフリーランスなど国民年金だけに加入している人に比べて多くの年金をもらえるという話を聞いたことがある人は多いと思います。

厚生年金は国民年金の上乗せである旨、前述しましたが、65歳からの老齢厚生年金は、老齢基礎年金に上乗せされる形で支給されます。その分、受け取る年金額が多くなるのです。

厚生年金の加入者が受け取る年金=老齢基礎年金+老齢厚生年金

老齢基礎年金の計算方法

老齢基礎年金は、20歳~60歳までの40年間保険料を納付した場合の満額年金額が毎年法令で決められます。2020年度の満額年金額は78万1,700円(月額約6万5,141円)とされています。

実際に個人が受け取れる年金の額は、保険料を納付した期間および免除になった期間に応じて決まります。会社員の場合、基礎年金(国民年金)保険料は厚生年金保険料に含まれ給料から天引きされているため、給料をもらっている限り、基礎年金保険料を納付していることになります。

仮に、22歳から60歳まで会社で働き続けた場合、老齢基礎年金の額は次のように計算できます。781,700円×(38年/40年)=742,615円(2020年4月からの年金額)

もう少し簡単に計算できる方法もあります。40年間納付して約78万円の年金額になるということは、1年納付するごとに約1万9,500円ずつ老齢基礎年金額が増えていくことになります。

ざっくりした計算ですが、次の計算式を覚えておくといいでしょう。
老齢基礎年金額=19,500円×加入年数

ただし、そもそも公的年金制度に10年以上加入していないと、将来の老齢年金はもらえません。

老齢厚生年金の計算方法

厚生年金保険料が収入額に基づく標準報酬月額で決められていたように、将来受け取る老齢厚生年金の金額も収入によって変わります。年金額を計算する際には、これまでの収入額および加入期間を用います。

ちなみに老齢厚生年金を受け取るための条件は、老齢基礎年金の受給資格要件を満たしていること(加入期間が10年以上)と、厚生年金の被保険者期間が1カ月以上あることです。

老齢基礎年金の計算に比べ少し複雑になりますが、老齢厚生年金の金額も自分でざっくりと計算することも可能です。

その際は、2003年3月までに厚生年金に加入していた期間と、2003年4月以降の厚生年金加入期間に分けて計算します。というのは、これまで何度かあった年金制度の改定で、年金額の計算に用いる給付乗率が改定されたため。現在30代後半以上の人は2003年3月以前も厚生年金に加入していた人も多いはず。該当する人は、次のそれぞれの計算式で算出された金額を合計します。

A:2003年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額×(7.125/1,000)×2003年3月までの加入期間の月数

B:2003年4月以降の加入期間
平均標準報酬額×(5.481/1,000)×2003年4月以降の加入期間の月数

老齢厚生年金額=A+B

じっくり見ないと気づきにくいですが、上の式のAとBでは計算ベースが異なります。Aは「平均標準報酬月額」となっていますが、Bは「平均標準報酬額」。

少し複雑ですが、Aの計算に用いる平均標準報酬月額は、先に厚生年金保険料の計算に用いる「標準報酬月額」のこと。

Bの計算に用いる平均標準報酬額は、「標準報酬月額」と、賞与から引かれる保険料を計算する際の「標準賞与額」の総額を、2003年4月以降の加入期間で平均したものです。

自分で計算するのは難しいですが、老齢基礎年金同様にざっくりと計算する方法もあります。

Aの期間は大体の平均給与、Bの期間は大体の平均年収で計算してみましょう。

給付乗率も小数点以下の数字が多くなるほど敬遠したくなりますから、シンプルにして計算してみましょう。大まかな年金額は把握できます。

A:2003年3月以前の加入期間
平均給与月額 × 12 × 0.7% × 2003年3月までの加入年数

B:2003年4月以降の加入期間
平均年収 × 0.55% × 2003年4月以降の加入年数

老齢厚生年金額=A+B

いつからいつまで加入したか、年数がよくわからないという人は毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」を確認してみましょう。加入記録が詳しく記載されていますよ。

老後の不安をファイナンシャルプランナーに相談してみませんか?

【計算例1】60歳まで同じ会社で勤めた場合

計算条件は次の通りとします。
・22歳から60歳までの38年間、厚生年金に加入
・2003年3月までの厚生年金加入期間は15年。15年間の平均給与月額は25万円
・2003年4月以降の厚生年金加入期間は23年。23年間の平均年収額は550万円
(1) 老齢基礎年金:19,500円×38年=741,000円
(2) 老齢厚生年金A:250,000円×12×0.7%×15年=315,000円
老齢厚生年金B:5,500,000円×0.55%×23年=695,750円

年金額:741,000円+315,000円+695,750円=1,751,750円

【計算例2】35歳で退職し自営業になった場合

計算条件は次の通りとします。
・基礎年金は22歳から60歳までの38年間(厚生年金13年、国民年金25年)
・厚生年金加入期間は2003年4月以降のみで13年。13年間の平均年収額は400万円
(1) 老齢基礎年金:19,500円×38年=741,000円
(2) 老齢厚生年金B:4,000,000円×0.55%×13年=286,000円

年金額:741,000円+286,000円=1,027,000円

【計算例3】30歳で退職。40歳で再就職した場合

計算条件は次の通りとします。
・厚生年金加入期間は18歳から30歳までの12年間および40歳から60歳までの20年間
・基礎年金加入期間は20歳から60歳まで(30歳から40歳までは第3号被保険者)の40年間
・2003年3月までの厚生年金加入期間は12年。12年間の平均給与月額は18万円
・2003年4月以降の厚生年金加入期間は20年。20年間の平均年収額は300万円
(1) 老齢基礎年金:19,500円×40年=780,000円
(2) 老齢厚生年金A:180,000円×12×0.7%×12年=181,440円
      老齢厚生年金B:3,000,000円×0.55%×20年=330,000円

年金額:780,000円+181,440円+330,000円=1,291,440円

これを見ると、将来の年金受け取り額は、年収額もさることながら、厚生年金への加入期間が大きく影響することがわかるでしょう。

【Q&A】知っておきたい!厚生年金の注意点など

加入履歴や年金の受給額の調べ方は?

過去の加入履歴や年金の受給見込み額は、毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」に記載されています。ねんきん定期便は日本年金機構から送られてくる圧着式で見開きタイプのハガキです。35歳、45歳、59歳の節目の年には封書で送られてきます。

「ねんきん定期便」にはこれまでの加入期間、これまでの保険料納付額、将来の年金見込み額などが記載されています。手元に届いたら必ず目を通すようにしましょう。

なお、前の誕生月に届いたねんきん定期便が見当たらない、次の誕生月がまだ先というような場合には、日本年金機構が提供している「ねんきんネット」で確認することも可能です。

ねんきんネットは、パソコンやスマートフォンから24時間いつでも利用できるサービスで、郵送で届くねんきん定期便を電子版で閲覧できるほか、日本年金機構から郵送された各種通知書なども確認することができます。

ねんきんネットを利用するためにはユーザIDとパスワードが必要です。日本年金機構が運営するサイトから利用登録の手続きしてみましょう。

保険料を払ったのに年金を受給できないことはある?

老齢基礎年金も老齢厚生年金も、それぞれ受給できるための要件が決められています。

老齢基礎年金は保険料納付済み期間と保険料免除期間をあわせて10年以上あることです。老齢厚生年金は老齢基礎年金の受給要件を満たしていることに加え、厚生年金の被保険者期間が1カ月以上あることです。

これらの要件を満たしていない場合には、保険料を払っていても将来年金受給はできません。たとえば、20歳で就職し29歳で退職、その後は国民年金未加入というような場合には、厚生年金に9年間加入していたとはいえ将来の年金は何も受け取れなくなります。

年金受給額を加算することはできる?

老齢厚生年金は、会社員として保険料を払った期間と年収に応じて増えていきます。将来の年金額を増やそうと思えば、リタイアするまで1年1年を大切に、できるだけ長く会社員として働くことが将来の年金を増やすもっとも効果的な方法だと言えるでしょう。現役中の収入を増やすことも将来の年金額アップには有効です。

それ以外に年金を加算する方法として、繰り下げ受給をする方法があります。本来65歳からもらえる年金を1カ月繰り下げるごとに年金額が0.7%加算されます。

繰下げ受給する場合には最低12カ月繰り下げることが必要ですが、その後は70歳(2022年4月以降は75歳まで)の間で、1カ月単位で自由に繰り下げ月数を決めることができます。

12カ月繰り下げれば8.4%、70歳までの60カ月繰り下げれば42%本来の年金額に加算されることになります。

厚生年金と国民年金のみで老後資金は足りる?

厚生年金に加入していた人は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせてもらうことになるため、老齢基礎年金だけの人に比べると受け取る年金額は多くなります。

とはいえ、公的年金は一定の給付を行うことで生活の安定を図るための制度ですが、それだけで満足な生活ができるものではありません。加えて、平均寿命が延び続けている昨今では、蓄えていた老後生活資金が途中で不足するリスクも考えられます。

老後に必要な生活費の金額は人それぞれの暮らしぶりによっても異なりますが、一般的には定年まで勤め上げる場合でも年金だけで生活費のすべてをカバーすることはできないと考えられています。できるだけ満足できる生活になるよう、さらなる上乗せとして預貯金や投資などで老後資金を準備していきましょう。

掛け金が所得控除になり、運用益が非課税になるなど、優遇税制のある個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用するのもおすすめです。投資信託などでの複利運用効果を、非課税の活用で効率的な資産形成が期待できます。

iDeCoは公的年金の被保険者タイプ(1号~3号)および、第2号被保険者(会社員・公務員)は会社で確定給付・確定拠出年金に加入しているかどうかなどによって拠出上限額が月1万2,000円~6万8,000円までの間で決められています。

現在厚生年金に加入している人も、過去に加入していたという人も、加入したことがない人も、安心な老後生活を目指して自助努力していきたいですね。

他にも、自分年金として将来の収入を増やす方法はさまざまあります。どの金融商品を選べばいいか迷ったら、ファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。

※本ページに記載されている情報は2020年12月28日時点のものです

【参考文献】
日本年金機構:老齢年金ガイド/2019年度版
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03.pdf

ほか

續 恵美子(つづき えみこ)

エフピーウーマン

生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。