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扶養に入るか外れるか?年金・税金と収入のしくみをFPが解説

パートで配偶者が働く場合、扶養内の収入に抑えておくと年金など社会保険料や税金を払わなくてよいといわれています。扶養に入れる収入っていくらまで?扶養に入ると、将来の年金はもらえるの?扶養と収入、税金や公的年金のしくみを解説します。

目次

そもそも扶養とは?

夫婦で共働きをしている場合、妻が夫の扶養に入ってパートをしている家庭は少なくありません。では、そもそも「扶養に入る」とは具体的にどのようなことなのでしょうか?

一般的な定義では、扶養とは親族(おもに夫、親、子など)の経済的支援を受けることです。この定義からいうと、たとえば夫の収入で生活する妻は、妻に収入があってもなくても、また妻の収入がいくらであっても「夫に扶養されている」ことになります。

しかし、税金や社会保険の話をするときには、「扶養」の意味を限定的に定義することがあります。これらの制度では、所定の年収までなどの条件を満たす人のみを「扶養されている人」とするためです。扶養されている人のことを、「被扶養者」ということもあります。(以下、夫に家計を中心的に担う収入があり、妻がパートをしている前提で説明します。)

一般的には、このように税金や社会保険の制度上で「扶養されている人」とみなされるようにすることを「扶養に入る」ということが多いようです。妻がパートをしている共働きの夫婦で、税金や年金などの負担を軽減するために妻が夫の扶養に入るようなケースです。ただ、扶養に入ることで何がどれくらい軽減されるのか、具体的なことはあまりよくわからない人もいるようです。
実は扶養は、おもに(1)社会保険の扶養、(2)税扶養、(3)会社の扶養手当の3つの制度にあるもので、それぞれに異なった要件があります。「扶養に入ったほうが良いかどうか?」を考えるときには、それぞれの要件を知っておくと判断しやすくなります。

[図表1]

筆者作成

●(1)社会保険の扶養
社会保険の扶養とは、妻の健康保険と公的年金にかかわる扶養です。このうちまず健康保険については、妻の年収が130万円未満で、会社員や公務員の夫の収入で生計を維持してもらっていれば、夫の健康保険の「被扶養者」になることができます。妻は自分で健康保険料を負担しなくても、夫の勤務先の健康保険から保険証が発行され、3割負担で病院などを受診できます。

同時に、妻の年収が130万円未満で、会社員や公務員で厚生年金に加入している夫に扶養されていれば、妻は国民年金の「第3号被保険者」になります。第3号被保険者は自分で国民年金の保険料を納付する必要がありません。保険料を納付していなくても、この期間は保険料を納付したとみなされて、老後に受け取る年金額に反映されます。

つまり、1.夫が会社員や公務員、2.妻の年収が130万円未満、3.妻は夫に扶養されている※ の3つすべてに該当すれば、妻は健康保険料も国民年金の保険料も負担する必要がありません。そして、夫の健康保険の対象になり、老後には年金を受け取ることができます。一般的には、このことを社会保険の「扶養に入る」といいます。

※健康保険の「被扶養者」には、年収130万円未満という要件のほかに、夫と同居している場合には夫の収入の半分未満、別居している場合には夫からの仕送り額未満という要件もあります。また、会社員・公務員の配偶者だけでなく、子ども、孫、兄弟姉妹、父母、祖父母なども健康保険の被扶養者になれます。

●(2)税扶養
税扶養とは、夫の所得税・住民税にかかわる扶養です。

所得税・住民税には「配偶者控除」「配偶者特別控除」というしくみがあって、納税者の税額の計算のもとになる総所得金額から所定の額を差し引くことができます。夫婦が同一生計で生活していて、妻の給与収入が103万円以下であれば「配偶者控除」を、103万円超~201.6万円未満であれば「配偶者特別控除」を適用できます。このことを「税扶養」と呼ぶことがあります。

配偶者控除も配偶者特別控除も、納税者である夫の所得税・住民税の計算上で適用するものです。年収201.6万円未満の妻を扶養している夫は、自分の税金の負担を減らすことができます。

配偶者控除は最大38万円(住民税は妻が70歳未満なら最大33万円)を夫の総所得金額から差し引きます。総所得金額とは、給与収入や利子、配当、不動産の賃貸収入など、所得税の対象となる収入から経費を差し引いた後の「所得」を合計したものです。この金額に応じた「控除額」13万円~38万円(住民税は11万円~38万円)を差し引いて、夫の所得税を計算します。

差し引ける控除額は、夫の合計所得金額が900万円以下(給与収入のみの場合は年収1,120万円以下)ならば配偶者控除で差し引ける金額は38万円(住民税は妻が70歳未満なら33万円)ですが、合計所得金額が900万円超950万円以下(給与年収1,120万円超1,170万円以下)なら控除額は26万円(住民税は妻が70歳未満なら22万円)、合計所得金額が950万円超1,000万円以下(給与年収1,170万円超1,220万円以下)なら13万円(住民税は妻が70歳未満なら11万円)です。夫の合計所得金額が1,000万円超(給与年収1,220万円超)なら配偶者控除は使えません。

配偶者特別控除も、最大38万円(住民税は最大33万円)を夫の総所得金額から差し引くものです。妻の給与収入が103万円を超えたときに使えるもので、妻の年収201.6万円まで段階的に控除額が低くなるように設定されています。また夫の収入によっても控除額が異なり、夫の合計所得金額が1,000万円超(給与年収1,220万円超)なら配偶者特別控除は使えません。

配偶者控除も配偶者特別控除も、社会保険の扶養とは異なり、夫が会社員・公務員でなくても使えます。

●(3)会社の扶養手当
夫の勤務先によっては、妻の年収が所定の金額以下であれば、企業独自の「扶養手当」を支給していることがあります。家族手当と呼ばれることもあります。企業によって水準が異なりますが、妻の年収を103万円以下、または130万円以下としていることが多いようです。手当の金額は企業が就業規則などに定めています。

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103万円、106万円、130万円、150万円……年収の壁とは?

このように、扶養に入るしくみは税や社会保険それぞれで異なります。また、いずれも妻の年収を要件にしているため、扶養に入るためには妻の収入がそれ以上高くならないようにしなければなりません。厚生労働省のまとめによると、年収を気にして就業調整している人のうち、約7割が配偶者のいる女性だそうです。そのため、それぞれの制度での妻の年収上限は「年収の壁」とも呼ばれます。
年収の壁には「103万円の壁」「130万円の壁」などがありますが、それぞれ家計にどのように影響するのでしょうか。

●年収103万円の壁とは
税負担に関わる年収の境界です。夫が所得税・住民税で配偶者控除を使えるのが、妻の年収103万円までです。配偶者控除は上述のように、最大38万円(住民税は最大33万円)を夫の税の計算で総所得金額から差し引けます。たとえば夫の所得税率が20%なら、配偶者控除38万円を使えると夫の所得税額が1.9万円低くなります。

妻の所得税でも、年収103万円は一つの区切りです。妻の収入がパートなど給与のみであれば、年収103万円までは妻に所得税がかかりません。年収が103万円を超えると、超えた部分に対して妻に所得税がかかります。課税される所得金額が195万円までであれば所得税率は5%とされているため、課税される所得税額はそれほど高額にはなりません。とはいえ、上述のように夫の配偶者控除が使えなくなることと合わせて、妻の年収が103万円未満の時に比べると夫婦合計でかかる税負担は増えるでしょう。

夫の勤務先で扶養手当・家族手当が出ている場合、家族手当の金額は企業によって異なりますが、妻の年収103万円を上限としていることがあります。妻の年収が103万円を少し超えてしまったために、それまで毎月受け取っていた家族手当を受け取れなくなると、手当カットによる収入減が妻の年収増を上回ってしまうおそれがあります。

●年収106万円の壁とは
妻の社会保険にかかわる年収の境界です。妻のパート先によっては、年収106万円以上になると妻が自分の勤務先で社会保険に加入することがあります。すると、妻の給与から健康保険料と厚生年金保険料(あわせて社会保険料)が天引きされます。

妻の年収が年収106万円以上でも、130万円未満でかつ夫が会社員・公務員ならば、夫の社会保険の扶養に入れるはずです。しかし、夫の社会保険の扶養の制度とは別に、社会保険にはパートで働く人を加入させるしくみもあります。このため、妻の年収が130万円未満で夫の社会保険の扶養に入る要件を満たしていても、106万円以上であることを理由に妻のパート先で社会保険に加入させることになれば、夫の扶養には入れません。

妻が夫の扶養から外れて自分で社会保険料を払うことになると、それまでに比べて妻の手取り収入が減る可能性があります。

パートの妻が社会保険に加入するのは、下記の要件すべてに該当したときです。このうち2つめ「1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上であること」は、年収にすると106万円です。


<勤務先の条件>

  • 1.1週間あたりの決まった労働時間が20時間以上であること
  • 2.1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上であること
  • 3.雇用期間の見込みが1年以上であること
  • 4.学生でないこと
  • 5.以下のいずれかに該当すること
       
    • (1)従業員数が501人以上の会社(特定適用事業所)で働いている
    •  
    • (2)従業員数が500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて労使で合意がなされている

出典:厚生労働省「平成28(2016)年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai.html


●年収130万円の壁とは
妻の社会保険にかかわる年収の境界です。上述の106万円の壁の要件に該当しなくても、年収130万円以上になるとパート先は妻を社会保険に加入させなくてはなりません。年収129万円で社会保険に加入しなければ手取りから差し引かれるのは所得税・住民税のみですが、年収130万になると加えて社会保険料が差し引かれ、手取りが下がってしまいます。

また、夫が会社員・公務員の場合、夫の社会保険で「被扶養者」になれる要件も年収130万円未満とされています。妻の年収が130万円以上になると扶養には入れなくなりますので、多くのケースでは妻がパート先で社会保険に加入することになります。

年収106万円の壁と130万円の壁はいずれも妻の社会保険に関わりますが、妻が社会保険に入るのが、年収106万円以上なのか130万円以上なのかは、妻のパート先の条件によります。下図のフローチャートのように判断するとよいのではないでしょうか。

[図表2]

●年収150万円の壁とは
税負担にかかわる年収の境界です。妻の給与年収が150万円以下であれば、夫は所得税・住民税の「配偶者特別控除」で最大の控除額を適用できます。配偶者特別控除で差し引ける控除額は夫、妻の年収の組み合わせによって1万円から最大で38万円(住民税は33万円)ですが、最大の金額を差し引ける妻の年収の上限が、150万円(住民税は155万円)です。
妻の年収が150万円を超えると、配偶者特別控除の控除額が段階的に減額されます。

●年収201万円の壁とは
税負担にかかわる年収の境界です。妻の年収が150万円(住民税は155万円)を超えても、201.6万円までであれば、まだ所得税の「配偶者特別控除」を受けられます。ただ差し引ける控除額は段階的に少なくなります。夫の給与が年収1,120万円以下(合計所得金額が900万円以下)の場合、妻の年収が150万円超155万円以下なら控除額は36万円、155万円超160万円なら31万円と少なくなり、妻の年収が201.6万円以上になると控除額はゼロになります(住民税は妻の年収が155万円超160万円以下なら控除額は33万円、155万円超160万円なら31万円と少なくなり、妻の年収が201.6万円以上になると控除額はゼロになります)。
つまり、妻の年収が201.6万円以上になると、扶養の意味合いでの税の優遇措置はなくなるということです。

このように、パートの妻の年収がいくらなのかによって、どの制度の扶養に入れるのかが異なります。また、社会保険は妻の勤務先、会社の扶養手当は夫の勤務先によって扶養に入れる妻の年収上限が変わることがあります。妻がパートに出るときには、どの制度で扶養に入れるかを確認したうえで、いくら稼ぐかを検討するとよいですね。

[図表3]

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扶養に入るときに手続きは必要?

では、扶養に入るときに手続きは必要なのでしょうか?

●扶養に入るための手続き方法
夫が会社員・公務員の場合は夫の勤務先を通して手続きをします。夫の勤務先や妻の収入や働き方の状況によりますが、税金・健康保険と公的年金の手続きを同時に行うことが多いようです。
税扶養については、「給与所得者の扶養控除等の申告書」という書面を提出します。これを提出しておくと、年末調整の時に配偶者控除や配偶者特別控除を適用できるように、夫の勤務先が対応してくれます。ただ、実際にはその年が終わったときに夫婦それぞれで年収水準が要件を満たしていないと控除できません。
夫が自営業などでも、毎年の所得税の申告時に夫婦それぞれの年収水準が要件を満たしていれば、配偶者控除や配偶者特別控除は使えます。確定申告をするときに申告書に記載しましょう。

健康保険と公的年金の扶養に入る手続きは、夫の勤務先によって必要な書類の種類や数が異なることがあります。また手続きに時間がかかることがあります。その間は健康保険については国民健康保険か、直前に勤めていた会社の健康保険を継続する(任意継続といいます)、公的年金については自分で国民年金に加入する必要が生じるケースもあります。国民健康保険と国民年金は、自治体の窓口で手続きをします。切り替え手続きが漏れていたり、ブランクの期間があると、無保険の期間が生じてしまいます。健康保険に入っていない期間に病院にかかると医療費が全額自己負担になってしまいますし、公的年金では将来に受け取る年金額が減ってしまうおそれがあります。夫の勤務先に、切り替え手続きの流れやスケジュールを確認するとよいでしょう。

自分で国民年金に加入すると、自分で年金保険料を納めることになります。扶養に入る手続きが完了してから、扶養に入った期間と国民年金の保険料を納めた期間が重複していれば、払い過ぎた保険料があとから還付されます。

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●社会保険の扶養に入れる「年収130万円未満」には交通費が含まれる
社会保険の扶養に入るときには、夫の勤務先に妻の収入の内訳を申告します。申告するのは過去の収入ではなく、扶養に入ろうとする時点からの年間の見込み収入額です。

ここで含まれる収入は、実はパートからの給与だけではありません。残業代や賞与、交通費のほか、預貯金の利子や株式などの配当、傷病手当金、出産手当金などを受け取れば、それも含みます。これらを合わせた年収の見込みが130万円未満でないと、扶養には入れません。見込みの年収の裏付けとして、過去1年間のこれらの収入の内訳を求められることもあります。

税扶養と社会保険の扶養では妻の年収に含める対象が異なります。傷病手当金や出産手当金などは、所得税の配偶者控除(妻の年収103万円まで)や、配偶者特別控除(妻の年収最高201.6万円まで)を超えるかどうかの判断では収入に含めませんが、社会保険の扶養に入れるかどうかを判断する際の年収に含めます。

年収130万円未満に抑えて扶養に入れるつもりでいても、実は交通費分を含めたら130万円以上になって扶養から外されてしまうこともありえます。扶養に入るための年収には何を含めて判断するかを確認しておきましょう。

●扶養から外れるときも手続きが必要
扶養から外れる時も、手続きが必要です。税扶養は毎年申告書を提出します。夫が会社員や公務員の場合は、扶養から外れた年にその旨を記載して夫の勤務先に提出します。夫が自営業の場合は、外れたタイミングでの手続きは不要です。確定申告のときに配偶者控除や配偶者特別控除を適用せずに税の申告をします。

社会保険の扶養は、変更があったときに手続きをします。妻が再就職する、パート先で社会保険に入るときは自分の勤務先で健康保険と厚生年金に加入する手続きをします。自営業になる、フリーランスとしての年収が130万円以上になるなどのときは、自分で自治体の窓口で、国民健康保険と国民年金に加入する手続きをします。

ほかにも、会社員・公務員だった夫が自営業になったときや退職したとき、離婚したときなども扶養から外れます。いずれの場合も手続きが必要です。

[図表4]

扶養に入る方が有利か?外れる方が有利か?

では、働く妻は夫の扶養に入るのと外れるのと、どちらが有利なのでしょうか?

特に迷う人が多いのが、妻の年収が130万円前後の場合です。年収130万円(妻のパート先によっては年収106万円)以上になって妻が社会保険に加入したときの健康保険料や年金保険料の負担は、年収103万円を超えて負担する税金に比べて高めです。

年収130万円を月収に換算すると約10.8万円です。このとき健康保険、厚生年金に加入すると、1カ月に天引きされる健康保険料は約5,400円、厚生年金保険料は約1万円です。合わせて月に1.5万円、年間で約18.5万円の負担になります。年収が130万円なら、社会保険料を差し引いた手取りは約112.5万円になるわけです。さらに、所得税や住民税が差し引かれます。せっかく130万円以上稼いでも、社会保険料がかかると手取りは大幅に下がってしまいます。

ならば扶養に入って、社会保険料を負担せずに130万円近い手取りを確保する方が、目先の収入面では有利にみえます。

●扶養から外れても手取りを確保するなら、年収160万円以上が一つの目安に
健康保険料や年金保険料が天引きされても、扶養に入れる上限の年収130万円以上の手取りを確保するには、いくらくらい稼げばよいのでしょうか?

諸条件にもよりますが、年収150万円~160万円台だと、健康保険料と厚生年金保険料の負担が合計で年間20~25万円前後、つまり手取り年収が130万円以上になります。扶養から外れても手取りを確保するなら、妻の年収160万円以上がひとつの目安でしょう。

ただ、パートで年収160万円以上にしようとすると、時給の水準が高い仕事か、就業時間がフルタイム並みでないと実現できないケースがあります。扶養から外れて妻が自分で社会保険に加入するなら、正社員にしてもらうなど、妻の働き方や勤務先での雇用条件の見直しを検討する必要があるかもしれません。

なお、厚生労働省のまとめ「適用拡大に伴う短時間労働者の働き方の変化(JILPT調査結果)」によると、2017年に社会保険の適用対象が拡大し、一部の企業でパートの人を含め年収106万円以上から社会保険に加入することになった際には、それまで夫の扶養に入っていた人のうち約50%が「厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える(維持できる)よう、所定労働時間を延長した」そうです。約半数の人が年収の壁を気にせずにパートの収入を上げたようです。

共働き世帯の妻や子どもを、夫の扶養に入れるのは本当にお得?

●国民年金の第3号被保険者は保険料を払わなくても将来の年金は受け取れる
一方で、将来の年金はどうでしょうか。夫の扶養に入っていれば、妻は国民年金の「第3号被保険者」になり、国民年金の保険料を払う必要がありません。国民年金の保険料は月額16,410円(2019年度額)ですので、年間にして約20万円の負担をせずにすむのです。

しかも、国民年金の第3号被保険者は保険料を納めなくても、65歳以降には老齢年金を受け取れます。原則として老齢年金の受取額は60歳までに納めた保険料に応じて決まりますが、第3号被保険者についてはその期間分の保険料を納めたものとして、受取額の金額に反映されるのです。

この点からしても、扶養に入っておくのは有利にみえるかもしれません。

[図表5]


●扶養に入るより、自分で厚生年金に加入したほうが将来の年金額は増える可能性
ただ老後に受け取る年金の総額は、厚生年金に加入しておく方が高くなる可能性があります。

公的年金は65歳から受け取りを開始し、生きている限り受け取り続けます。90歳まで生きれば25年分になります。厚生年金に加入せず国民年金だけを受け取る場合、2019年度の年金受給額は満額で780,100円。年金額は今後変更されることがありますが、かりに年間約80万円だとすると、25年間の受取総額は約2,000万円になります。

厚生年金に加入していれば、ここに老齢厚生年金が上乗せされます。たとえ1年だけでも厚生年金に加入すれば老齢年金額は月額500円上乗せされ、これが生涯にわたって続きます。20年間加入すれば上乗せ額は月額9,100円、年額にして109,400円です。65歳から25年間にわたって受け取れば、約270万円多く受け取ることができます。

社会保険に加入して現役時代の手取りが少々減ってしまっても、長生きすることを考えると年金受け取りの面で有利に働くかもしれません。

●ライフプランや制度の変化で扶養に入れなくなることも
別の観点では、そもそもいつまで扶養に入り続けられるか? ということも長期的な視点で考えておきたいものです。もしもこの先に家族の状況が変われば、扶養に入り続けられなくなるかもしれません。たとえば夫が会社を辞めた場合や、独立した場合は夫が社会保険(健康保険・厚生年金)からはずれ、妻も扶養に入れなくなります。また、離婚した場合も扶養から外れることになります。

もうひとつ、社会保障の制度として「扶養」のしくみがなくなってしまう可能性も否定できません。
近年、国民年金の第3号被保険者をめぐっては、保険料負担の不公平性を指摘する議論があります。またおもに妻が保険料を負担せずに済むしくみ上、働くことを阻害する要因になっているとの指摘もあり、厚生労働省の審議会などでは第3号被保険者の制度を廃止すべきとの意見が出ているようです。
扶養に入れるかどうかは、夫の状況や国の制度の変化によって左右されます。これは自分ではコントロールできないという意味で、リスクともいえるかもしれません。人生100年時代を考えると、健康保険や公的年金などの生活の基盤を自分で確保し、その保険料を払っていく選択肢も想定しておくと安心ではないでしょうか。

このように、扶養に入るかどうかは短期的、長期的両面での家計やライフプラン、キャリアプランに大きく影響します。目先の手取り収入だけでなく、長い人生を豊かに暮らすために適した選択は何か? その答えは個人や家庭の状況によって異なります。ファイナンシャル・プランナー(FP)に相談すると、長期的、総合的なライフプランを整理したうえで年金や扶養の考え方をサポートしてくれるでしょう。

※本ページに記載されている情報は2019年7月31日時点のものです

【出典】
■厚生労働省 平成28(2016)年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/2810tekiyoukakudai.html
■財務省 個人所得課税・資産課税
https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei17_pdf/zeisei17_01.pdf
■厚生労働省 働き方の多様化に伴う被用者保険制度の課題
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000459563.pdf
■厚生労働省 第3号被保険者制度
https://www.mhlw.go.jp/shingi/0112/s1214-3g.html
■日本年金機構「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20141204-02.html
■日本年金機構「国民年金の第3号被保険者制度のご説明」
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140627-01.files/03.pdf
■国税庁「No.1190配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1190.htm
■国税庁「No.1191配偶者控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
■厚生労働省 配偶者手当を取り巻く現状
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000123906.pdf
■厚生労働省「働き方の多様化に伴う被用者保険制度の課題」
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000459563.pdf
■国税庁「No.2260所得税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
■協会けんぽ「平成31(2019)年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/h31/ippan4gatsu_2/h31040213tokyo.pdf
■国税庁「家族と税」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_2.htm
■国税庁「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm
■日本年金機構「健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20141204-02.html
■日本年金機構「老齢年金について」
https://www.nenkin.go.jp/service/seidozenpan/yakuwari/20150518.html#cmsrourei

加藤 梨里(かとう りり)

マネーステップオフィス株式会社

お金と健康に関わる記事制作、監修、コンテンツ開発・企画専門。大手メディア等での執筆実績1万本以上。家計、住宅、保険、教育、老後、税金から食事、栄養、運動、病気の予防・未病まで信頼性の高い情報を専門家が精査し、わかりやすいコンテンツを制作しています。