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老後は賃貸?持ち家?悩む50代に向けてFPが考察

50代に入ると気になるのは、老後のお金が足りるかに加え、老後どこに住むかではないでしょうか?賃貸なら高齢でも部屋を借りられるか不安になったり、持ち家なら住み続けるか住み替えるか迷ったりすることでしょう。老後の住まいをFP視点で考えました。

目次

■50代の持ち家率は低下

賃貸と持ち家、どちらが有利か、よく議論されるテーマです。何歳まで生きるか、家賃や転居の回数、持ち家を購入する際の住宅価格や住宅ローンの金利はどれくらいかなど、条件が変われば費用の試算結果は違ってきます。FPによっても意見が分かれるところです。今回は50代を想定し、老後を見据えて考えてみたいと思います。
まず、そもそも日本の持ち家率はどれくらいなのでしょう?調査によれば、全国平均では61.5%の世帯が持ち家です。しかし、地域によりかなりの差があります。東京都では45.6%と半数以下。地価が高いことが影響しているようです。一方、最も持ち家率が高いのは富山県。北陸や東北地方の日本海側では持ち家率が高めで、都市圏や北海道、九州では持ち家率が低くなる傾向があります。
下の表は、都道府県別の持ち家世帯率の一部をまとめたものです。都市圏、北海道、沖縄では、持ち家率は半分程度となっており、賃貸が少数派というわけではありません。

年齢別ではどうでしょうか?年齢が高くなるほど持ち家世帯率も高くなりますが、60歳未満では低下傾向です。50代は、平成10年(1998年)には74.9%だった持ち家世帯率が平成25年(2013年)には71.4%に低下しました。残り約3割の世帯は賃貸ということです。今後は、賃貸住宅で老後を迎える人が増えて行きそうです。

高齢者向け住宅にはいくつかの種類がありますが、その一種として国が建設を後押しし、ここ数年、戸数が急増しているのがサービス付き高齢者住宅、通称「サ高住」です。高齢者向けの賃貸住宅で、見守りサービスが受けられます。
提携する介護サービス事業所があるのが一般的で、持ち家がありながら、老後はこの「サ高住」に入居する人もいます。家賃形式なので、初期費用があまり高くなく、有料老人ホームよりも気軽に入居できる点も急増の理由のようです。老後の住まいの選択肢はこれまでより広がっていきそうです。

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■人生100年時代は住まいとの付き合い方も変わる?

年齢とともに住まいに求めるものは変化
年齢や暮らし方により、住いに求めるものは違ってきます。結婚して子どもが生まれれば、家族で一緒に過ごせる広いリビングに価値を感じるでしょう。子どもが成長し夫婦2人の生活になったら、コンパクトな中にも、それぞれの趣味に没頭できる空間が欲しくなるかもしれません。
子どものいる既婚者であれば、子どもが自立する50代以降は住まいの見直しの時期になります。90代まで生きるなら、人生はまだ半分近く残っていますから、その期間を自分らしく過ごせる住まいについて改めて考える必要がありそうです。
住む場所や住宅の種類も、郊外の戸建てから交通の便のいい都心のマンションに住み替えたい、逆に都心のマンションから自然豊かな地方の戸建てに住み替えたいなど要望は様々でしょう。子どもがいない夫婦も、60代以降の老後を見据えて、住み替えなどを検討することになりそうです。
シングルで50代になった人は、自分1人の年金と資産で最後まで暮らせるのは、どこか。より真剣に老後の住まいを考えるべきです。既婚者も、配偶者が亡くなれば、子どもと同居しない限りは1人になります。1人で暮らす老後は、高齢者が暮らしやすい間取りや住宅設備、買い物や病院への行き来の利便性などを求めたくなるでしょう。
そして、いずれの場合も、住まいの選択は、お金を抜きにしては考えられません。同時に、人生100年時代と言われるほど寿命が伸びた現在、持ち家であれ賃貸であれ、50歳の時に住んでいた住宅に、何もせずにそのまま最後まで住み続けることは難しいでしょう。
住まいに使えるお金と自分の状況に応じて、持ち家から賃貸へ、賃貸から持ち家への転居を決断する人も増えていくことでしょう。

持ち家でも買って終わりではない
持ち家のメリットとしてよく言われることは、住宅ローンを払い終えたら負担が減ることです。しかし、例えば35歳で30年の住宅ローンを組んで購入すると、65歳で住宅ローンの支払いが終わるころには、住宅はかなり老朽化しています。
購入後は大小様々なメンテナンス・修繕を行ってきたはずですが、95歳まで住み続けようと思うなら残り30年もあります。大がかりなリフォームや、状況によっては建替えが必要になる可能性もあります。長生きの時代には、持ち家だから老後は住居費がかからないとは言い切れない、これまでの常識とは違うと思っておいた方がよさそうです。
一方、賃貸は、生きている限り家賃を払い続けることになります

さて、ここからは持ち家と賃貸、それぞれのコストやメリット、選択肢、費用について考えてみます。

■老後持ち家のコストとメリット

賃貸ならかからないけれど、持ち家の場合に負担しなければならない費用として次のものがあります。

持ち家ならではの費用(住宅ローン終了後)
固定資産税
住宅のメンテナンス・修繕費用
長く住み続けるなら、リフォームや建替え費用
など

一度にまとまった金額が必要になるのはリフォームや建替え費用です。リフォームは程度にもよりますが数百万円。建替えはマンションなら目安は一戸あたり1,000万円~1,500万円と言われています。戸建てならどんな家を建てるかにより数千万円。建替え中の仮住まいの費用もかかります。
これだけの費用をかけるなら、いっそ別の住宅を買って住み替える方法もありますね。

資産価値による住み替えやリバースモーゲージのメリットも
持ち家を売ったお金で、持ち家を買う住み替えなら、売却額以内で収まるか、購入する物件の選択が重要になります。
不動産価格が高い地域から安い地域への住み替えであれば、売却益が残って老後資金にあてられる世帯もありそうです。持ち家を売って、賃貸に住み替える方法もあります。購入ならそれなりの金額が必要になりますが、賃貸なら毎月払っていけばいいので、手元にお金を置いておける安心感があります。もちろん、残りの寿命を予測して、払える家賃の物件を選択しなければなりません。
住み替えには、持ち家の資産価値が大きく影響します。地方から都心への住み替えは、購入する住宅の広さや価格が制限され、希望の物件には手が届かないケースもあるでしょう。そもそも買い手が付く物件であることが、持ち家からの住み替えの条件となります。
持ち家の価値を査定してもらい、その一定範囲内まで借り入れができるリバースモーゲージも利用できます。借り入れた資金で持ち家のリフォームをしたり、公的年金だけでは不足する生活費に充てたりすることもできます。
亡くなったら住宅を売却し、借入金との差額を相続人が相続してリバースモーゲージの契約が終了するのが一般的です。ただし、リバースモーゲージが利用できる住宅の条件は金融機関により異なり、また通常は法定相続人がいることも条件です。子どもがいる人に向いているといえます。
戸建ての持ち家なら、リフォームや二世帯住宅への建替えにより、子どもと同居することで安心感を得て、子どもは住宅の費用を抑えることもできます。

持ち家のメリットをまとめると次のようになります。
建替えにより新しくできる(費用はかかる)
買い換えにより転居できる(費用は住宅の資産価値による)
一定の広さがあれば子どもとの同居が可能(リフォームや建替えの費用がかかるケースも)
条件を満たせばリバースモーゲージによる借り入れができる

持ち家には維持費などのコストと、状況によってはリフォームや建替えの費用がかかりますが、資産価値が維持できれば、メリットもあるわけですね。
それなら50代からでも住宅を購入しようかと思った賃貸の人は、事前にFPに相談するなどしてしっかり資金計画を立ててください。50代からの購入は、住宅ローンを組める期間が短くなりますし、60歳以降の収支も含めてよくよく検討しなければなりません。購入する物件も慎重に選んでください。

持ち家のデメリットも確認しておきましょう。
メンテナンスやリフォームの費用が足りないと、古い設備のまま我慢して住み続けなければならない
マンションの場合、建替えたくても入居者の合意が得られず、建替えられないケースも
マンションの場合、自分は建替えしたくないのに、建替えが決まれば費用負担が生じる
子どもや兄弟、甥姪などの法定相続人がいない場合は、死後は国の財産となる


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■老後賃貸の選択肢とメリット

老後も賃貸の場合は、どんな選択肢があるのでしょう?老後の賃貸暮らしにメリットはあるのでしょうか?
賃貸の人にとって最も大きな不安は、家賃を払い続けられるか、高齢になって貸してもらえるかの2点と思われます。持ち家だから必ずしも費用が安くすむわけではないことは先ほど紹介しました。一方、家賃を払い続けた場合も、その総額は相当な金額になります。とはいえ賃貸は、転居により、家賃を下げることができます。老後になっても賃貸で転居ができるかどうかは大きな問題です。
日本において高齢化は社会的な問題で、今後は賃貸で暮らす高齢者の増加が予測されることから、国や自治体でも対策を講じています。入居を断られるなど、老後に賃貸住宅への入居で困ったときは、まず自治体に相談しましょう。高齢者向けの相談窓口を設けているところもあります。
また高齢者のみならず、障害者や子育て世代など「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度が2017年から始まりました。場所や家賃、広さなどの条件を入力して、セーフティネット住宅情報提供システムから検索することができます。「死亡するまで住み続けられる賃貸住宅」の制度(終身建物賃貸借事業)を認定する制度もできました。
参照:セーフティネット住宅情報提供システム

高齢者の入居が多い公的住宅
賃貸住宅は、民間、公営(自治体等が運営)、都市再生機構(UR)・公社の大きく3つに分けることができます。調査によれば、民間借家が多い現役世代に比べ、60歳以上では公営や都市再生機構(UR)・公社といった公的住宅の入居者が多くなっています(日本の住宅・土地-平成25年住宅・土地統計調査より)。
自治体等が運営する公的な住宅には、一定の所得以下の人が入居でき、家賃が低く設定されたものもあります。先ほど紹介した「サ高住」も老後の賃貸の選択肢のひとつです。
高齢になっても情報収集して行動すれば、最後まで賃貸住宅に住み続けることはできるはずです。賃貸の入居時には保証人を求められることが一般的ですが、保証人に代わり、保証機関を利用する仕組みも整ってきています。
賃貸のままでは老後に困るという不安は徐々に取り除かれてきており、家賃にもよりますが、購入よりも安く住める可能性もあります。毎月の分を払えばいいという気楽さも賃貸の特徴とメリットといえるでしょう。
ただし、家賃として払える金額により設備や広さ等の差が大きいのが賃貸のデメリットです。

場所により家賃等に大きな差
ご存知の通り土地の値段は地域により大きく異なり、不動産価格は土地の値段の影響を強く受けます。これは持ち家、賃貸とも同様です。ただ、賃貸で老後も家賃を払い続ける場合、年金収入で家賃と生活費をまかなおうとすれば、家賃の上限がおのずと決まってきます。
土地の高い都市部より郊外、さらに地方と、現役時代に住んでいた場所から離れざるを得ないケースも出てきそうです。「サ高住」も、当然のことながら土地の価格が高い都心など便利な場所にある物件は家賃も高くなります。
さて、持ち家のコストやメリット・デメリット、賃貸の選択肢とメリット・デメリットをご紹介しましたが、いかがでしょうか?それぞれに特徴があり、家族構成、老後の年金額、資産額、健康状態、暮らし方などにより、どの選択が適切かは異なります。50代のうちには、すぐには結論が出ないという人が大方ではないでしょうか?
とはいえ50代に入ったら、老後はどこでどんな生活をしたいかを考えることと合わせて、住みたい地域の賃貸住宅やサ高住の家賃相場、中古戸建てや中古マンションの相場を調べておくことをおすすめします。
50代であれば、60歳または65歳の定年や引退まで約10年ありますから、貯蓄を積み増すことも可能です。手元資金は多い方が選択肢が広がります。こうありたいというイメージがはっきりすれば、貯蓄のモチベーションも上がるはず。
さらに、自分の計画に無理がないか、不動産に強いFPに相談したり、キャッシュフローシミュレーションを作成してもらったりするのもいいでしょう。具体的な金額で可視化できれば、漠然とした不安がやわらぎ、より現実的に計画を修正できます。
せっかく長生きできる時代ですから、人生後半を納得のいく場所で過ごせるよう、今から準備しておきたいですね。

※本ページに記載されている情報は2019年6月20日時点のものです

【参考文献】
総務省統計局:日本の住宅・土地-平成25年住宅・土地統計調査の解説- 結果の解説 
https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/pdf/nihon04-1.pdf

坂本 綾子(さかもと あやこ)

ファイナンシャルプランナー 大学在学中より雑誌の編集に携わり、卒業後に取材記者として独立。1988年よりマネー誌、女性誌にて家計管理や資産運用の取材記事を執筆。1999年ファイナンシャルプランナー資格取得。執筆に加えて、家計相談やセミナー講師も務める。