遺族に支給される「遺族年金」はいつ・誰が・いくら受給できるのか?FPが基本を解説 | リクルートの保険比較サイト【保険チャンネル】

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遺族に支給される「遺族年金」はいつ・誰が・いくら受給できるのか?FPが基本を解説

遺族の経済的な備えとしての遺族年金制度をわかりやすく解説!ひとくちに遺族年金といっても遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種があり、受給するには数々の条件があります。対象となる人やもらえる金額など、遺族年金制度の基本を確認しましょう。

最終更新日:2021年1月29日

この記事の早わかり要約 読了目安時間:

遺族年金とは年金加入者(受給中含む)が死亡した場合に遺族が受け取る年金

遺族が年金を受け取るためには年齢や死亡した人との関係により条件がある

死亡した人が加入していた年金の種類や受給対象により保障の範囲等が異なる

目次

遺族年金とは

遺族年金とは公的年金の保障の11つで、国民年金や厚生年金に加入している人または年金を受給中の人が死亡したときに、遺族に支払われる年金のことです。

日本の公的年金制度の基本的な考え方は、給付を通してみんなの暮らしを支え合うというもの。その考えのもとに作られている年金制度は大きく分けて次の3つのための給付があります。

・老後の暮らし(老齢年金)
・事故などで障害を負ったとき(障害年金)
・家計を支える一家の働き手が亡くなったとき(遺族年金)

国民年金に加入している人も、厚生年金に加入している人も、ほとんどの人は老後に年金を受け取ることを目的として月々の年金保険料を納付していると思います。しかし、せっかく保険料を納付しても老後の年金をもらわずに死亡してしまうケースもあります。

遺族年金は、老後に年金をもらわなくなった本人に代わり、遺族が経済的な給付を受ける、いわば保険的な役割を担っているものです。

しかし、公的年金制度に加入中の人または、年金受給中の人が死亡したからといって、すべての場合に年金が支払われるわけではありません。遺族年金の給付を受けるためにはいくつかの条件を満たすことが必要です。

また、受給できるとしても、死亡した人が加入していた年金が国民年金か厚生年金かによっても保障の範囲や内容が異なります。

遺族年金の受給対象者はだれ?

ひとくちに遺族年金といっても、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種があり、死亡した人が国民年金と厚生年金のどちらに加入していたかによって変わります。また、遺族が受給できるかどうかは死亡した人との関係や年齢などによって決まります。

まずは自分が遺族年金を受給できる可能性があるかどうかチェックしてみましょう。

遺族年金は受け取る人・種類によって条件が決まっている


ただし、表中に記載されたすべての遺族が遺族年金を受給できるわけではありません。受給できる遺族には受給対象者の優先順位が決められており、表の上位にある人に対して支払われます。

たとえば、18歳未満の子を持つ配偶者(夫または妻)がいればその人に、該当者がいなければ18歳未満の子に……と対象者が下順位の人に移ります。

なお、表中の遺族に該当する場合でも、死亡した人に「生計を維持されていた」ことが受給できる大前提です。最近では共働きで協力し合って家計を支える夫婦も少なくなく、このように言うと「私はもらえないかも……」と考える人がいるかもしれません。

しかしここで言う「生計維持」とは次の2つを指しますので知っておきましょう。
・同居していた(別居でも仕送り、健康保険の被扶養者などの事項があれば可)
・遺族の前年の収入が850万円(所得655万5,000円)未満である

共働きだからといって遺族年金を受け取れないわけではないことがわかってもらえたでしょうか。

ここからは、遺族が妻・夫・子の場合に分け、それぞれ受給のための条件をもう少し詳しく見ていきましょう。

受け取るのが配偶者(妻または夫/子あり)の場合

亡くなった配偶者(夫または妻)が国民年金に加入していれば遺族基礎年金、厚生年金加入していれば遺族厚生年金を受給できます。

ただし、ここで言う「子」とは、「18歳到達年度末(3月31日)までにある子」、または「障害年金の障害等級1級、2級にある20歳未満の子」とされています。また、被保険者が死亡した当時、胎児であった子がいれば、出生以降に対象となります。

しかし子どもが18歳(障害等級1、2級の場合は20歳)未満でも、すでに結婚している子の場合は対象から外れます。

受け取るのが子の場合

ひとり親の死亡など、親が亡くなった時点で子が18歳未満であり、かつ、もう一方の親(死亡者の配偶者)がいないときに遺族年金を受給できます。ただし、子が結婚している場合には受給できません。

亡くなった親が国民年金に加入していれば遺族基礎年金、厚生年金加入していれば遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方を受給できます。

受け取るのが妻(子なし)の場合

子どもがいない場合には、亡くなった夫が国民年金に加入していれば遺族年金はもらえません。しかし厚生年金加入だった場合は子どもがいなくても遺族厚生年金を受給できます。
しかし、実は妻の年齢によって遺族厚生年金の支払われ方が異なります。

妻の年齢が30歳未満:遺族厚生年金は5年間の有期給付になります。妻の年齢が40歳以上65歳未満:遺族厚生年金に加え、妻が65歳になるまで中高齢寡婦加算額(年58万6,300円)が支給されます。

なお、中高齢寡婦加算は子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳)ため、遺族基礎年金を受け取ることができなくなった場合にも支払われます。

受け取るのが夫(子なし、かつ55歳以上)の場合

子どもがいない場合には、亡くなった妻が国民年金に加入していれば遺族年金はもらえません。しかし厚生年金加入だった場合は子どもがいなくても遺族厚生年金を受給できます。

しかし、妻が亡くなった時点で自分(夫)の年齢が55歳未満の場合には遺族厚生年金も受け取ることはできません。

遺族年金をもらえない場合「死亡一時金」が支給される

国民年金に加入している人が死亡した場合、子どもがいなければ遺族年金はもらえません。しかし本人も老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま死亡し、かつ、遺族も遺族基礎年金の支給を受けられないというのは、年金保険料の納付損になってしまいます。

そこで、国民年金第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月(3年)以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま死亡し、かつ、遺族が遺族基礎年金の支給を受けられないときには「死亡一時金」が支給されます。死亡一時金は次の遺族のうち、優先順位の高い人が受け取ることができます。

1.配偶者
2.子
3.父母
4.孫
5.祖父母
6.兄弟姉妹
死亡一時金の額は、保険料を納めた月数に応じて一定額が決められています。

死亡一時金を受ける権利の時効は、死亡日の翌日から2年です。

ここまでは、遺族年金をもらえる人であるかどうか、もらえるならどの年金かを中心に見てきました。ここからは、遺族年金の給付対象となる場合、いくらもらえるのかなどについて見ていきましょう。

遺族年金の受給額はいくら?

遺族基礎年金の受給額

遺族基礎年金の金額は次の計算式で決められます。
・子のある配偶者が受け取る時

78万1,700円+子の加算額(2020年4月以降)
子の加算額は、次の通りです。
・第1子・第2子:各22万4,900円
・第3子以降:各7万5,000円

たとえば、18歳未満の子どもが2人いる配偶者が受け取る場合、123万1,500円が給付される計算です。
781,700円+224,900円+224,900円=1,231,500円
なお、年金額および子の加算額は毎年見直しされることは知っておきましょう。

・子が受け取る時
78万1,700円+2人目以降の子の加算額(2020年4月以降)
子どもが複数人いる場合には、上の計算式で算出された金額を子どもの人数で割った金額が、子ども1人当たりの受取金額となります。

遺族厚生年金の受給額

遺族厚生年金の金額は次の計算式で決められます。
老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4=(A+B)×3/4
A:2003年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額×(7.125/1,000)×2003年3月までの加入期間の月数
B:2003年4月以降の加入期間
平均標準報酬額×(5.481/1,000)×2003年4月以降の加入期間の月数

実は、上記AとBの計算式は、老齢厚生年金の金額を決めるときに用いる計算式です。つまり、ざっくり言うと、死亡した被保険者が65歳になったときにもらえるはずだった老齢厚生年金(ただし、死亡するまでの加入期間の分)の3/4ということになります。

なお、死亡した人の生年月日によっては、上記A、Bを計算するときの給付乗率が変わる場合があります。詳しくは社会保険事務所などで確認するようにしてください。

遺族年金はいつからいつまでもらえる?

遺族年金は亡くなった人の死亡日が属する月の翌月分から受給することができます。たとえば死亡日が9月20日であれば、10月分から受給できることになります。
しかし実際に年金を受け取れるまでには、遺族年金の請求手続きをしてから3~4カ月かかります。
請求手続きをしたあと、まずは故人の年金記録確認や整備、受給権の確認などが行われ、1~2カ月内に「年金証書・年金決定通知書」が郵送されてきます。「年金証書・年金決定通知書」が届いたあと、50日程度で最初の年金が振り込まれます。
なお、年金は2月、4月、6月、8月、10月、1122月の各偶数月の15日(土・日・祝日の場合は直前の営業日)に2カ月分ずつ支払われます。しかし、初めての受取り分は、受給権の発生時期によっては奇数月になる場合もあります。

遺族年金の受給手続き

次に遺族年金の受給手続きについて見ていきましょう。
先に見たように遺族年金は死亡日の属する月の翌月分から受給することができますが、手続きをしてから3~4カ月待たないと入金されません。まだ受け取っていない月分は遡って受給することができますが、手続きが遅くなるほど受給までの時間が延びてしまいます。
万が一の際に早めに手続きできるよう、どこで、どのように手続きするのか知っておきましょう。

・国民年金(遺族基礎年金)の場合

住所地の市区町村役場の窓口で手続きします。
ただし、国民年金第3号被保険者(会社員・公務員の配偶者に扶養されている人)の死亡の場合は、近くの年金事務所、年金相談センターで手続きします。
各手続き場所に備え付けられている年金請求書および、年金手帳や戸籍謄本、死亡者との生計維持関係を確認できる住民票など必要書類を揃えて提出します。
詳しくは市区町村役場または年金事務所、年金相談センターで確認してみましょう。

・厚生年金の場合
現役の人が死亡した場合、それまで勤めていた勤務先で手続きできる場合があります。勤務先に確認してみましょう。
すでに老齢厚生年金を受給していた人が死亡した場合には、住所地を管轄している年金事務所、年金相談センターで手続きします。
必要書類は年金請求書および、年金手帳や戸籍謄本、死亡者との生計維持関係を確認できる住民票など多々あります。詳しくは年金事務所、年金相談センターに確認してみましょう。

遺族基礎年金の受給期間

遺族基礎年金はもともと子どもの養育を目的とした給付です。それまでに遺族基礎年金の給付を受けていても、子どもが18歳の年度末等の一定の年齢に達したときに支給が停止されます。

遺族厚生年金の受給期間

遺族厚生年金については、配偶者が受給する場合、再婚などの失権事由に該当しない限り、終身にわたって受け取ることができます。ただし、夫が死亡当時30歳未満で子どものいない妻は、遺族厚生年金の受け取りは5年間に限られます。

なお、先にも見たように、遺族厚生年金では、夫、父母、祖父母も55歳以上であることを条件に給付の対象になります。しかしながら、これらの人が遺族厚生年金を受け取る場合には、受給開始は60歳からになります。

ただし、子のある夫で遺族基礎年金を受け取ることができる人は、60歳より前でも遺族基礎年金と遺族厚生年金を合わせた額を受け取ることができることになっています。

もしもの備えに遺族年金制度を確認しておこう

ここまで遺族基礎年金と遺族厚生年金のそれぞれの場合で、対象となる人の要件や給付の内容など、基本的な仕組みについて見てきました。大まかに理解しておくだけでも、もしものときの安心感は高まると思います。

しかしながら、遺族年金は、もしもの時の生活保障の一部をカバーすることはできても、それだけで充分ではない場合がほとんどです。たとえば、遺族基礎年金は子どもが18歳になると給付されなくなり、子どもが大学に入り一番お金がかかる頃にグンと収入が減ってしまう仕組みです。

人の人生が十人十色なら、年金の加入状況も、必要なお金も十人十色です。自分に合った備えのためには、遺族年金を自分事として考え、それで不足する分を保険や預貯金などで補うようにすることが大切です。

とはいえ、そもそも遺族年金の内容もわかりにくいものです。もしもの備えとして困らないために、ファイナンシャルプランナーに相談するのがおすすめです。

※本ページに記載されている情報は2021年1月28日時点のものです

【参考文献】
日本年金機構:遺族年金ガイド/2020年度版
https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03-3.pdf

厚生労働省:遺族基礎年金お手続きガイド
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12500000-Nenkinkyoku/0000088432.pdf

ほか

續 恵美子(つづき えみこ)

エフピーウーマン

女性のためのお金の総合クリニック認定ライター。ファイナンシャルプランナー〈CFP(R)〉 生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。