【FPが伝授】手間をかけずにお金を増やす方法とは?
超・低金利時代の現在、貯蓄だけでは、なかなかお金が増えないというのが現実です。老後の長さを考えると、投資も含めてお金を増やす(殖やす)という視点が欠かせないでしょう。そこで、忙しい人でも手間をかけずにお金を増やす方法をFPが指南します。
目次
老後資金はどれくらい必要?
日本人の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳(2016年厚生労働省発表)と過去最高を更新し、「人生100年時代」に突入とも言われています。その一方で、『老後資金は公的年金の他に2千万円必要なの?』『いや、ゆとりある老後には5千万円必要らしい!』などと、老後資金への不安は広がっています。
長い人生を豊かに過ごすためには、ある程度のお金は必要です。今や、老後資金を公的年金だけに頼る時代ではなく、不足する分は自分で準備していかなければならない時代になっているのです。
では、老後資金はどれくらい必要なのでしょうか。まずは、現在の高齢者がどのような老後生活を送っているのか、総務省の「家計調査報告(2018年)」を見てみましょう。夫65歳以上、妻60歳以上の高齢夫婦の1か月あたりの消費支出の平均額は、以下のような結果になっています。
この調査結果によると、高齢者世帯では、収入が毎月41,872円不足しているため、貯蓄を取り崩しながら生活していると予想されます。つまり、月に4.2万円不足すると仮定した場合、65歳から100歳までで約1,800万円必要というのが老後資金準備の目安になるでしょう。もちろん、これは統計による平均値にすぎません。必要な生活費は、どのような老後生活を送りたいのかによっても変わりますし、持ち家や就業の有無などにも左右されますので、ご自身のケースではどのくらい老後資金を準備すればよいのか、一度算出してみると良いでしょう。
また、現役世代では結婚資金やマイホーム購入資金、子どもの教育費や旅行代など、まとまったお金が必要になるシーンはたくさんありますので、それぞれのイベントに資金がどれくらい必要かを洗い出してみましょう。いくら必要か、具体的な数字がわかれば目標ができて行動に移しやすくなりそうですね。では次に、具体的にどのように必要な資金を準備するかを見ていきましょう。
貯めるだけでは限界?貯蓄と投資の違い
貯蓄と投資の違い
貯蓄とは、預貯金などの元本が保証された方法で確実にお金を増やすことを指します。一方、投資とは株式や債券、投資信託などの金融商品を購入し、配当を受け取ったり値上がり時に売却したりして、元本以上の利益を得ることを目的に行うものです。
例えば、30歳の夫婦が10年後にマイホームを購入する頭金として500万円貯めたいという場合、貯蓄で準備するべきでしょうか、それとも投資で準備するべきでしょうか。この場合、資金が必要な時期は10年後と、比較的近い時期ですし、確実に500万円を用意したいですよね。このような場合は、一般的には貯蓄で準備する方が適しているでしょう。
一方で、同じ夫婦が老後資金を準備するという場合はどうでしょうか。この場合は、必要な時期が30年以上も先ですし、貯蓄だけで老後資金を貯めることは難しいと思われますので投資も含めて老後資金を準備するのが良いでしょう。まだお子様が誕生するかどうか、何人家族になるのかも確定していませんので、40代、50代と状況に合わせて資金計画を見直していくことで対応していくと良いでしょう。
毎月1万円(年間12万円)を30年間貯蓄した場合、利息が付かなければ360万円です。では、投資をするとどうなるでしょうか。利回りの違いで30年後にどのくらいの差が出るのかを見てみましょう。利回り1%の場合は約417万円、3%の場合は約571万円、5%の場合は約797万円になり、ほんの数%の差でも、30年後の金額には大きな差がつくことがわかります。
老後資金のように長期間かけて準備する資金は、ただ貯めていくのではなく、ある程度「運用」をして、「お金を殖やす」ことも視野に入れると効率的に資金を準備できるといえます。
しかし、投資には「リスク」があります。リスクと聞くと、「危険」、「危ないこと」という印象があると思いますが、投資においてのリスクは、「結果が予想通りにいかないこと」を示し、リスクの大きさは「変動幅」の大きさを表します。
例えば、「この商品はリスクが大きい」という場合、値動きの変動幅が大きく、儲かる時は大きく儲かるものの、損失が出る場合の金額も大きくなるという意味になります。しかし、収益(リターン)を得るためにはある程度リスクをとらなくてはなりません。つまり、ハイリスク、ハイリターンの関係性があるといえます。
すると、『投資は損をすることもあるのでしょう?』『なんだか難しそう』『投資を勉強する時間がない』などといった理由で、しり込みをしてしまう人もいらっしゃいます。しかし、貯蓄にもリスクがあるのをご存知でしょうか。
貯蓄のリスクとは?
貯蓄では元本が保証されていますので、金額の上では「お金が減る」ということはありません。ですが、インフレ時には、実質的には「目減り」してしまうというリスクもあるのです。
日本ではバブル崩壊後、デフレ状態が長く続きましたが、日本銀行は2013年1月、「物価安定の目標」として消費者物価の上昇率を前年比2%にすると目標に定めました。目標はまだ達成されていないものの、2018年の全国平均の消費者物価指数(総合指数)は、2015年を100として101.3、前年比は1.0%の上昇となっています。現在、定期預金は年利0.01%程度といった金融機関も多く、物価上昇率には届いていない状況です。つまり、定期預金だけではお金の価値が目減りしているということになります。
お金を目減りさせないためには、どうしたらよいのでしょうか。そのためには、何らかの方法でお金を「殖やす」必要があります。例えば、国債や株式に投資する、利率の高い外貨預金で運用する、不動産や金(ゴールド)に投資するといったような方法が考えられます。
投資のリスクとは?
では、投資にはどのようなリスクがあるのでしょうか。例えば株式に投資する場合、経済状況や会社の業績などにより株価は常に変動しますので、「価格変動リスク」があります。また、投資先の会社が倒産してしまう可能性もゼロではありません。他にも債券や投資信託などの、元本が保証されていない商品には価格変動リスクがあります。
また、投資先には日本だけではなく外国もありますが、国の政治・経済状況の変化が証券市場や為替市場に影響します。この変動のリスクを「カントリーリスク」といいます。日本や欧米諸国などの先進国に比べると、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国、などの新興国の方がカントリーリスクは大きくなります。新興国では、高い経済成長が見込める半面、電気や鉄道などの社会インフラが未発達だったり政情が不安定だったりすることがその要因です。外貨預金をする場合や外国債券等に投資する場合には、カントリーリスクも考慮する必要があります。
さらに、外貨預金を円に戻す場合やその逆の場合には、為替レートの影響を受けます。為替相場も常に動いていますので「為替変動リスク」の影響も受けます。このように、投資にはさまざまなリスクがあるのです。
リスクを減らす方法
投資にはリスクがつきものですが、なるべくリスクを減らす方法はあります。それは、「積み立て投資・分散投資」を取り入れることです。
投資を行う際には、短期で売買すると経済状況の影響を受けやすいものですが、一度に購入するのではなく、少しずつコツコツと積み立て投資をしながら買い付け価格を平均化し、長期で保有し続ければ、景気に左右されにくく安定した運用につながります。
儲けるためには価格の安い時に一度に多く買って、高くなったら売れば良いと思うかもしれませんが、投資で売買のタイミングを見極めるのは、非常に難しいものです。しかし、積み立て投資では一定額を定期的に投資し続けるため、投資のタイミングは気にする必要がありません。忙しい人にも向いている投資方法です。
また、投資先を分散させて、日本だけでなく外国にも投資する、また株式だけでなく債券や不動産等にも投資するという方法でもリスクを分散できます。とはいえ、個別株や債券を別々に購入するのは手間もかかりますし、投資初心者は、どういった株を購入すればいいのか判断基準がわからないなど、ハードルが高いかもしれません。このような、忙しく投資に時間かけるのが難しい人は、比較的簡単に分散投資ができる「投資信託」を利用すると良いでしょう。
投資信託とは、投資家がそれぞれ投資したお金をまとめて、投資の専門家が株式や債券、不動産、金などの投資対象に投資して利益を投資家に還元する仕組みの商品です。投資信託は少額から投資でき、さまざまな種類がありますので投資先を分散させることも簡単にできるというメリットがあります。また、個人では投資しにくい国や資産に投資することが可能で、プロに運用を任せることができます。但し、その分、運用中の手数料がかかります。また、購入時や売却時にも手数料がかかる商品もあります。
節税しながらお金を「殖やす」方法
投資信託は、証券会社や銀行などの金融機関で購入することができますが、積み立て投資と節税が同時にできる制度がありますのでご紹介します。それは、「iDeCo」、「つみたてNISA」です。
「iDeCo」は、個人型確定拠出年金ともいい、公的年金に上乗せして老後資金を準備するための制度です。毎月または決まった時期に掛金を積み立てて、定期預金や投資信託等の金融商品を購入していきます。長期の分散投資が自動的にできる仕組みですが、60歳までは引き出すことができませんので注意しましょう。
iDeCoの掛金は全額所得控除できますので、年末調整や確定申告によって所得税と住民税の還付を受けることができます。さらに運用利益も非課税ですので、節税しながらお金を殖やすことができるのが大きなメリットです。但し、会社員の人は会社の企業年金制度によってiDeCoに加入できない場合もあります。まずはご自身の勤務先の企業年金制度がどうなっているか、確認してみましょう。
また、「つみたてNISA」は毎年40万円まで、最大20年間投資できる制度で、値上がり益や分配金が非課税です。つみたてNISAで購入できるのは、公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)です。つみたてNISAの公募株式投資信託は、購入手数料が無料で、運用中の手数料である信託報酬も最低レベルになっているなど、長期の積み立て・分散投資に適したものとして金融庁が認めたものですので、投資初心者でも比較的安心して始めることができるでしょう。つみたてNISAはiDeCoとの併用もできます。また、iDeCoと異なりいつでも売却できますので、iDeCoより自由度が高いのがメリットです。
「iDeCo」や「つみたてNISA」は、節税しながら積み立て・分散投資をすることができる制度ですので、可能ならば少しでも早く始めた方が効果的です。金融機関に行く時間がとれなくても、ネットで口座開設できる金融機関もありますし、ホームページから請求すると資料を郵送してくれる金融機関もあります。取り扱っている投資信託の種類や内容は、金融機関によって異なりますので、手続き方法や商品を確認した上で自分に合った金融機関を選ぶと良いでしょう。
キャッシュレス時代の賢くお金を「増やす」方法
投資でお金を「殖やす」必要性を感じたとしても、元手となる資金が必要なのは言うまでもありません。そこで家計を見直して、お金の使い方に無駄なところはないか、貯蓄や投資に回せるお金はないかを検討し手元のお金を「増やす」必要があります。
最近では、家計管理にスマホのアプリを利用している人も多いようです。忙しい人でも移動中やスキマ時間に手軽に入力できますし、クレジットカードや金融機関と提携して利用履歴や預金残高を自動で取り込んで資産を管理できるものもあります。
2019年10月の消費税増税時には、キャッシュレス決済で最大5%のポイント還元が行われるということが経済産業省から発表されていますので、最近はクレジットカードやデビットカード、電子マネー、スマホ決済などのキャッシュレス決済が急速に普及しつつあります。スマホ決済では、さまざまなキャンペーンも実施されていますので、利用している人も多いでしょう。
キャッシュレスで便利になった反面、ついお金を使いすぎてしまうという悩みを抱える方もいらっしゃいます。電子マネーやスマホ決済では、1か月にチャージする金額の上限を決めるなどして、使いすぎを防ぐように工夫しましょう。カード利用や電子マネーの支出を管理できるアプリもありますので無駄な支出がないか、お金を使いすぎていないかをきちんと把握するようにしましょう。
また、スマホアプリには支出を管理しながらお金を「増やす」ことができるものもあります。例えば、クレジットカードを利用した際に出る「おつり」を貯金したり、投資に回したりすることができるものです。
おつりを貯金するアプリでは、1,000円、500円、100円といったおつりの単位を選び、カード決済の際に出た端数を「おつり」として貯めていきます。以前は貯金箱に貯めていた小銭をキャッシュレスで貯めるイメージです。貯まったお金は提携の銀行口座に入金できる他、ネットショップで利用できるというアプリもあります。また、貯まったおつりを投資に回して「運用」することができるアプリもあります。
おつり投資にはロボアドバイザーの仕組みが導入されていることがほとんどです。ロボアドバイザーは、最初にどのくらいリスクを取れるのかを診断した上で、適した資産配分方針を提案してくれます。その後は、方針に沿って金融商品の購入や資産のバランス調整を自動で行ってくれますので、分散投資を前提とした資産運用が手間なくできるようになっています。
スマホアプリやキャッシュレス決済をうまく利用すれば、忙しい人でも無理なくお金を貯めたり、投資に回したりできそうですね。
お金は、「貯蓄で増やす」方法と「運用で殖やす」方法、両方の視点で効率よく貯めていくことが大切
です。近いうちに使う予定のお金は元本保証の預貯金で確実に増やす。老後資金のように使う時期が数十年先というお金は、投資しながら効率的に準備するというように、お金の使い道によって、貯め方、殖やし方も異なります。
今後どのようにお金を貯めていけばよいのか、計画や資産運用について不安がある場合は、ファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか。家計状況も合わせて相談すれば、投資に回すお金の捻出方法のアドバイスを受けることもできるでしょう。家計の見直しや住宅ローンの借り換え、保険の見直しなどでは専門的な知識が必要な場合もあります。お金の不安をなくすために、ぜひ専門家の意見を活用してください。
※ 本ページに記載されている情報は2019年7月15日時点のものです
【参考文献】
・総務省「家計調査報告」(家計収支編)2018年(平成30年)平均結果の概要
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2018.pdf
・国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」
https://www.ideco-koushiki.jp/
・金融庁ホームページ「つみたてNISA」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/index.html
・経済産業省ホームページ「キャッシュレス・消費者還元事業」
https://cashless.go.jp/
福島 佳奈美 (ふくしま かなみ)
ファイナンシャルプランナー、DCアドバイザー 情報システム会社で金融系SE(システムエンジニア)として勤務した後FPとして独立。保険、住宅ローン、教育費、老後資金準備などのマネーコラム執筆やセミナー講師、個人相談でお金の不安をなくすための正しい知識とライフプランニングの重要性を伝えている。