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子どもの医療費は無料なの?わかりやすく説明します【FP解説】

出産が近づくと、子どもの医療費が気になってくるものです。出産後しばらくは、赤ちゃんのお世話で気になることを調べたり出歩いたりすることが難しくなります。出産間近になって慌てることのないように、子どもの医療費についてわかりやすく説明します。

目次

子どもの医療費は無料?

日本の公的医療保険では、医療費の自己負担割合は、小学校入学前の子どもであれば2割、小学校に入学してからは3割となっています。これは、本来かかる医療費のうちの8割または7割が、公的医療保険制度から支払われるためです。子どもの医療費については、家計負担が重くならないように、全国すべての都道府県と市区町村で、独自に制度を設けて、さらに自己負担分を助成しています。

●乳幼児(子ども)の医療助成
厚生労働省が行った「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査(2018年度<平成30年度>)」によると、都道府県では、通院・入院ともに小学校入学前までの子どもを対象に医療費の援助を行うところが最も多く、市区町村では、通院・入院ともに15歳年度末(中学生まで)まで援助しているところが最も多くなっています。
各市区町村が実施する子どもの医療費の援助については、都道府県がその域内の市区町村に補助を行い、当該市区町村が実施する仕組みになっています。厚生労働省の調査結果からは、多くの市区町村が都道府県の対象年齢等を拡大して、子どもの医療費助成を実施していることがわかります。

例えば、東京都の子どもの医療費助成は、小学校入学前までの乳幼児医療費助成(マル乳)と、小学1年生から中学3年生までの義務教育就学児医療費助成(マル子)があります。

・乳幼児医療費助成(マル乳)
健康保険の対象となる医療費、薬剤費は、本来であれば自己負担分が2割ですが、その全額を助成してくれます。つまり、子どもが生まれてから小学校に入学するまでに、通院したり入院したりした場合で、健康保険が適用される医療費や薬代は無料となります。

ただし、入院中に病院でかかる食事代(1食460円)は自己負担となります。東京都の助成制度では、入院中に病院でかかる食事代は自己負担となりますが、市区町村によっては、その食事代を助成しているところがあります。

・義務教育就学児医療費助成(マル子)
通院については、健康保険の自己負担分である3割のうち、1回200円を上限として、それを超える医療費は全額助成されます。入院については、健康保険の自己負担分である3割を全額助成してくれます。ただし、マル乳と同じく、入院中に病院でかかる食事代(1食460円)は自己負担となります。

乳幼児(子ども)医療費助成の対象外となるのは、次のような健康保険の適用とならないものです。
<乳幼児(子ども)医療費助成の対象とならない主な例>
・健康診断
・予防接種
・薬の容器代
・差額ベッド代
・紹介状を持たずに200床以上の病院で受診した場合の初診料

東京都のなかでも、区市町村によって助成制度の内容は異なります。例えば、千代田区の子どもの医療費助成制度には「高校生等医療費助成制度」という独自のものがあります。保護者の所得制限はなく、医療費助成の対象となる子どもの年齢は、高校を卒業する18歳年度末までとなっていて、高校に通っていない子どもも対象になります。

健康保険の適用されない診療や予防接種、入院時の食事代などは対象外となりますが、それ以外であれば、医療費も薬剤費も全額助成されます。

また、市区町村によっては、保護者(子どもの養育者)の所得に制限を設けているところもあります。その場合、一定の所得以上となる世帯は、健康保険に加入していても自治体の助成を受けられません。つまり、子どもにかかる医療費の自己負担割合は、入学前であれば2割、入学以降であれば3割になるということです。

なお、生活保護や他の医療費助成(例:ひとり親家庭等医療費助成)などをすでに受けている場合は、重複して子どもの医療費助成を受けられない自治体がほとんどです。

子どもが生まれたばかりのときは、どれだけ病院に通院したり入院したりするかはわからないので、医療費について不安になるものです。そのような不安があるなかで、病院の窓口で支払う医療費が無料になったり、一部を負担するだけで済んだりする子どもの医療費助成制度は、とてもありがたいものです。

医療費助成が受けられる子どもの対象年齢や助成の内容、所得制限の有無などは、住んでいる自治体によって全く違うので、妊娠中の体調がよいときに、助成制度について調べておくとよいでしょう。たいていの自治体は、ホームページで情報を公開しています。読んでみてわからないことは、電話で問い合わせる方法もあります。

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乳幼児(子ども)医療費助成を受けるためには

子どもの医療費助成は、自動的に受けられるものではありません。出産すると、まず出生届を提出します。次にママとパパのどちらかの扶養として健康保険に加入します。

会社員や公務員の場合は、勤務先の窓口に健康保険の加入に必要な書類を提出します。人事や総務が窓口になっていることが多いでしょう。自営業の場合は、住民票のある市区町村の役所で国民健康保険に加入する手続きをします。

ママとパパが共働きで、それぞれ健康保険に加入している場合は、加入先の健康保険から所得が多い方の扶養に入れるよう指示されることがありますが、子どもをどちらの健康保険に入れるかについては、それぞれの健康保険で規定があるので、事前に問い合わせておきましょう。

子どもを健康保険に加入することができたら、住民票のある市区町村の役所に「子ども医療費受給者証」(乳幼児医療費受給者証など自治体によって名称が異なる)の交付申請をします。担当部署の名前は自治体によってさまざまですが、一般的に「子ども〇〇課」「子育て〇〇課」「国民年金課」「年金保険課」といった名称となっています。

国民健康保険に加入する場合は、出生届を提出するときに子ども医療費助成の申請ができます。一方、勤務先の健康保険に加入する場合は、健康保険証が手元に届いてから申請することになります。

勤務先から健康保険証の作成に時間がかかると言われた場合は、保険資格取得証明書を発行してもらい、保険証の代わりに提出すると、「子ども医療費助成受給資格者証(「子ども医療証」など名称は自治体によって異なる)」をスムーズに発行してもらえます。

役所の窓口に直接申請に行くと、通常はその場で子ども医療証を作成し、発行してもらえます。郵送による受付もしているので、里帰り出産する人や役所になかなか行けない人でも安心して申請することができます。ただし、郵送する場合は、申請書が役所に届いてから子ども医療証を作成するため時間がかかります。

子ども医療証は、医療機関で受診するときに、健康保険証と一緒に提示すれば、医療機関窓口での支払いが自己負担以内になります。

●赤ちゃんが小さく生まれたら
体の発達が未成熟なまま生まれた赤ちゃんに対しては、厚生労働省または都道府県が指定する医療機関で入院治療を受ける場合、その医療費を助成してくれる未熟児養育医療制度があります。この制度が適用されるのは、医師が入院治療を必要と判断した期間です。医療費は無料になる自治体もあれば、所得に応じて医療費の一部が自己負担となる自治体もあります。

未熟児養育医療制度では、入院中の食事療養費(ミルク代)が含まれますが、保険適用とならない治療費や差額ベッド代、おむつ代は公費負担の対象になりません。

対象となるのは、医師が入院治療を必要と判断した場合で、主に次のいずれかにあてはまる赤ちゃんです。
<未熟児養育医療制度の対象となる赤ちゃんの例>
・出生体重が2,000g以下
・体温が摂氏34度以下
・強いチアノーゼの持続
・生後24時間以上排便がない
・嘔吐を繰り返す
・強い黄疸がある

未熟児養育医療制度の対象になると診断されたら、住民票のある市区町村の役所へ制度利用の申請をします。申請するときは、赤ちゃんの健康保険証が必要ですが、まだ手元にない場合は、扶養する予定のママかパパの健康保険証で代用できます。

申請すると養育医療券が交付されるので、それを医療機関へ提示すると、健康保険による給付が行われた後の自己負担分(入院にかかるもののみ)および食事代が無料あるいは自治体が定めた一部自己負担ですみます。

未熟児養育医療制度の対象となる赤ちゃんは、乳幼児(子ども)医療費助成制度の対象にもなっているため、2つの制度を併用できます。ただし、未熟児養育医療制度の対象となる医療については、優先的にこの制度を利用します。仮に、子ども医療費助成制度で、医療費を無料としている自治体であれば、未熟児養育医療制度を利用して自己負担額が発生したとしても、後から子ども医療費助成制度の払戻し請求をすると、医療費は実質無料となります。

医療費助成の注意点

●乳幼児(子ども)医療証を受け取るまでに子どもが医療機関で受診した場合
子どもが生まれたからといって、すぐに乳幼児(子ども)医療証の交付申請ができる人ばかりではありません。交付申請をする前に子どもが医療機関で受診した場合、助成は受けられるのでしょうか。

乳幼児(子ども)医療証の発行は間に合っていない状況のため、いったん医療機関の窓口で医療費を支払うことになりますが、後日医療費の払戻しを受けられることがあります。医療費の払戻しが受けられるのは、市区町村がそれぞれ定めている医療証の交付申請期限に間に合った場合です。申請が遅れると医療費の助成を受けられない期間が出るので注意しましょう。

自治体のホームページには、子ども医療費助成の交付申請期限が掲載されているところもあります。掲載がないところは、出生してからいつまでに医療証の申請をすると、出生日に遡って助成が受けられるかを事前に問い合わせておくと安心です。

●里帰り出産や帰省しているときに子どもが医療機関で受診した場合
里帰り出産をした後に、子どもがそのまま病院に入院することや、出産後の帰省中に、子どもが風邪を引いたりケガをしたりして病院で受診することがあります。受診した病院が、子ども医療証を発行している市区町村のある都道府県内であれば、健康保険証と子ども医療証を提示すると、助成が受けられます。

ところが、都道府県外の病院で受診したり入院したりした場合は、子ども医療証は使えません。いったん健康保険証だけで受診し、乳幼児であれば医療費の2割を窓口で支払います。そして、自宅に戻ったら役所の窓口に行き、子ども医療費助成の払い戻し手続きをします。このとき、都道府県外の病院で受け取った領収書原本が必要になるので、紛失しないように保管しておきましょう。

子ども医療費助成の払い戻しには、有効期限があります。有効期限は市区町村によって異なりますが、通常は「診療日から何年」などと決まっています。申請期間を過ぎたものは助成の対象外となるので注意して下さい。

子どもの医療費を助成してくれる制度は、ママとパパにとって心強いものですが、自分で申請しないと利用できません。申請に必要なものや手続き方法は、妊娠中に時間を見つけて自治体に確認し、出産後に慌てなくてすむようにしておくことをお勧めします。子どもの医療費助成制度は、年々拡充する傾向にあります。制度の内容が変わっていることもあるので、出産が2度目以降の人も確認しておくといいでしょう。

医療費以外にかかるお金

「子どもが小さいうちは思っていた以上に医療費がかからない」と感じるママやパパは多いのではないでしょうか。確かに、充実した医療費助成のおかげで家計への負担は小さくてすみます。しかし、子どもが病気やケガで入院すると、ママやパパの付き添い費用が発生することがあります。発生する費用には、次のようなものがあります。

<付き添うことで発生する費用の例>
・ママやパパが病院に寝泊まりするときに使用する付き添い用の簡易ベッド代
・個室利用による差額ベッド代(大部屋だと付添い用ベッドが入らないため)
・病院までの往復交通費(着替えを交換しに行ったり、自宅での用事をしたりするため)
・付き添う人の食事代

付き添い用の簡易ベッド代は、1日あたり数百円~1,000円程度としている病院が多く、1日あたりの個室料金は、厚生労働省の「主な選定療養に係る報告状況」(2018年11月14日発表)によると平均7,837円です。子どもが入院すると、1日あたり少なくとも約8,000円~9,000円はかかると考えた方がいいでしょう。

付き添いをしなくても、子どものことが心配で、ほぼ毎日のように病院に顔を見に行ったり、着替えを交換しに行ったりすることもあります。このような場合は、自宅と病院までの交通費がかかります。子どもが複数いる家庭であれば、自宅で留守番をする子どものベビーシッター代がかかることもあります。

病院で完全看護となるケースを除くと、乳幼児だけでなく小学校低学年あたりまでの入院には、個室を利用してママやパパが付き添うのが一般的です。付き添いのために仕事を休んだり、仕事を休むことで収入が減少したりする可能性も考えておきましょう。

子どもが生まれると、元気にすくすく育ってほしいと願わない親はいません。そのため、子どもの入院や通院への備えが気になるものですが、元気であればその分、おむつや洋服、粉ミルク、お出かけ用のグッズ、帰省費用など、思いのほかお金がかかることもあります。妊娠した、子どもを出産したというご夫婦からは、次のような相談が多く寄せられます。

<出産予定や出産後のご家庭からの相談例>
・「慣れない赤ちゃんの世話で手一杯になり、家計管理が把握できなくなってしまったので、相談にのってほしい」
・「妊娠したことをきっかけに、夫婦でこれまで無頓着にしていた保険について考えたい」
・「これから家族が増えることで、生活がやっていけるか不安なので、家計管理のアドバイスをしてほしい」
・「子どもの医療費はほぼ無料に近いので安心しているが、教育資金が心配なので貯め方を教えてほしい」
・「子どもの出産を機に家を購入したいけれど、育児休暇と時短勤務を考えているので、どのくらいまでの価格なら購入してもよいか知りたい」

ファイナンシャルプランナー(FP)は、このような生活にかかわるお金の悩みを解決する専門家です。家族構成や収入などがほとんど同じであっても、毎月かかる生活費や子育てにかかる養育費・教育費は、家庭によってさまざまです。万一のことがあったときに保障はいくら必要なのか、家の購入価格はどのくらいが適正かなどについても、それぞれの家庭の希望や目標、考え方などをヒアリングして初めて答えが見えてきます。

子どもが生まれライフスタイルが大きく変化するときは、今後のライフプランを見つめなおすとても良いタイミングです。インターネットなどを通じて情報はいくらでも取れる時代ですが、正しい情報や自分たちにピッタリと合った情報を得られるとは限りません。FPに相談することで、自分たちに合ったお金の使い方や教育資金の貯め方、急な出費への備え方などについて、良質なアドバイスが受けられます。

自分たちで調べたり勉強したりすることは、もちろん価値あることですが、ライフプランを明確に立てて実行に移していくために、FPへの相談を賢く活用していきましょう。

※本ページに記載されている情報は2019年8月21日時点のものです

【参考文献】
厚生労働省「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査(2018年度<平成30年度>)」について
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000213116_00001.html
東京都福祉保健局ホームページ「医療助成」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/iryo/josei/index.html
千代田区ホームページ 「手当・助成」
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kosodate/teate/index.html
厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」(2018年11月14日)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000400350.pdf

中山 弘恵(なかやま ひろえ)

株式会社プラチナ・コンシェルジュ

1級FP技能士、住宅ローンアドバイザー、定年力アドバイザー、相続手続カウンセラー) 年間150回を超えるセミナー・研修、年間80回を超える個別相談、生活に関わるお金や制度をテーマにした執筆業務に従事。「わかりやすく丁寧なセミナー」「安心しながら気軽に話せる相談相手」「ストレスなく読み進められるわかりやすい文章」として定評がある。