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相続順位を図解!法定相続人となる配偶者・子・親・兄弟姉妹の相続配分や代襲相続など

「遺産相続」における相続順位を図解付きで解説します。配偶者、子、親、兄弟姉妹…相続財産は相続できる優先順位が法律で決められています。亡くなった人の遺産を相続できる「法定相続人」は誰で、いくらなのか。相続人の範囲や相続順位を見ていきましょう。

最終更新日:2021年4月7日

この記事の早わかり要約 読了目安時間:

遺産は法定相続人や遺言書で指定された人だけが相続できる

配偶者は常に相続人であり、子、親、兄弟姉妹と続く

定められた期限内に、相続するかしないかの意思表示をしよう

目次

遺産とは何を指す?遺産を相続する「法定相続人」とは

相続のことを考えるには、誰がどれだけの財産を取得する権利があるかを、まずは正確に理解する必要があります。また、遺言書の作成や相続関係者の間で生前にちゃんと話し合いを重ねておくことがとても大切です。

亡くなった人の財産を引継ぐ相続。その財産は配偶者や子どものように、亡くなった人の関係者がもらいます。相続の世界では、ある人が死亡したときにその人の財産(すべての権利や義務を含む)を、特定の人が引き継ぐことを相続といい、亡くなった人の財産のことを遺産といいます。

遺産とは、現金や預貯金、車・貴金属など、株式などの有価証券、土地・建物などの不動産、借入金などの債務、賃借権・特許権・著作権などの権利、などです。

亡くなった人を被相続人、遺産をもらう人を相続人といい、この相続人は民法で定められ、亡くなった人の配偶者と、子か親か兄弟姉妹等にあたります。これを法定相続人といい、原則として法定相続人に含まれない人には相続権が与えられないことになっていますが、遺言によってシェアすることは可能です。

資産相続の方法にはどんな種類があるの?

それでは、相続の方法にはどのような種類があるのでしょうか。おもに次の3つがあります。

法定相続

民法で決められた法定相続人が決められた分だけもらう方法です。

遺言による相続

亡くなった人が遺言書により、遺産を譲り受ける人として遺言書で指定された人(受遺者)の中で相続の内容を決める方法です。

遺産分割協議による相続

相続人全員で協議して、それぞれの事情に応じて遺産の分割方法を決めます。この遺産分割協議に参加できるのは法定相続人だけです。

生前中にとても仲が良かったり、たくさんお世話をしたとしても、法定相続人でないと相続することはできません。また法定相続人が全員揃っていないにもかかわらず、勝手に進めた遺産分割協議は無効です。

また未成年者が相続人になる場合、未成年者には代理人を立てる必要がありますが、一般的に代理人は親が務めることになり、これを法定代理人といいます。

しかし親も未成年者である子も、ともに相続人で、相続人全員で遺産分割協議が行われる場合などは、親が未成年者の代理人にはなれないことがあります。親と未成年者である子は利益相反関係となるからです。

このような場合には、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立て、代理人は未成年者に代わり、遺産分割協議や手続書類の記入・捺印などを行うことになります。ただし、未成年者であっても結婚しているなど、成人とみなされる場合もあります。

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相続人の優先順位を図解で解説

亡くなった被相続人の家族であれば全員相続するというイメージがあるかもしれませんが、相続人の対象は、配偶者や子どもなどの家族だけではありません。

相続人は家族以外にも、祖父母・孫・ひ孫、兄弟姉妹、甥姪、いとこ、などなど、ケースバイケースで色々な親族が相続人の対象となる可能性もあり、誰が遺産相続する相続人なのかを確定しないと、相続手続きを行うことができません。

そこで、法定相続人がきちんと定められ、相続順位の高い人から順番に相続をしていくことになるのです。
この相続人には相続させたくない!などという、感情論だけでは、この順位を変えることはできないのです。では、法定相続人には具体的にどの立場の人があてはまるのか、相続順位とともに見ていきましょう。例えば、下図のような家族の場合で、大黒柱である父親が亡くなった場合を想定してみましょう。

いったい誰がどういう順番で相続できるのでしょうか?

配偶者

被相続人に配偶者がいた場合、配偶者は常に法定相続人となります。配偶者に順位がつけられることはなく特別な相続人です。配偶者は正式な婚姻関係にあることが必要で、事実婚のパートナーや内縁の妻・離婚した前妻などは相続人になることができません。

また、配偶者以外に法定相続人がいない場合には配偶者のみが法定相続人となり、配偶者と他の相続人がいる場合には、配偶者とその他の相続人が法定相続人となります。

さらに、配偶者以外の相続順位は、第1順位から第3順位まで順番が決まっています。

第1順位:子ども

子どもが複数いる場合は全員が法定相続人となり、相続分は頭割りで計算されます。上図では長女と長男の2名です。被相続人には配偶者と子どもがいますので、配偶者と子どもが法定相続人となります。

相続割合については、配偶者と子どもが1/2ずつの法定相続分となり、子どもが複数いる場合には、子どもの相続分を頭割り計算することになります。

上図では配偶者・子ども2人が法定相続人です。配偶者が1/2、子どもが1/2×1/2=1/4。長女と長男の法定相続分は1/4ずつです。

第2順位:親

相続人に子どもも孫もいない場合には、親が法定相続人となります。

被相続人に配偶者と親がいた場合には、配偶者と親が相続人となります。配偶者がいない場合には、親のみが相続人となります。

親が2人いる場合には、1/2ずつになります。配偶者と親が相続人になる場合には、配偶者の法定相続分が2/3、親の法定相続分が1/3となります。

たとえば、配偶者と親2人が法定相続人になる場合には、配偶者が2/3、親が1/3×1/2=1/6ずつです。

第3順位:兄弟姉妹

被相続人に子どもや孫、親や祖父母などもいない場合には、兄弟姉妹が第3順位の法定相続人となります。兄弟姉妹が複数いる場合には、兄弟姉妹の法定相続分を兄弟姉妹の人数で頭割り計算します。

配偶者と兄弟姉妹が法定相続人になる場合には、配偶者の法定相続分が3/4、兄弟姉妹の法定相続分が1/4となります。

たとえば、配偶者と兄弟姉妹3人が法定相続人になる場合には、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4×1/3=1/12ずつの法定相続分となります。

以上のように、法定相続人は配偶者が常に優先で、第1順位から第3順位まで段階的に法定相続人を特定していきます。配偶者:子:親:兄弟姉妹=1:2:3:4と覚えておくと、配偶者は常に優先、あとは子どもから、1/2、1/3、1/4と覚えるといいでしょう。

また、相続人として常に優先される配偶者が、すでに亡くなっている場合の相続順位は、第1順位から優先的に全部を相続していくことになります。

配偶者が相続人である場合で、それぞれの順位の相続人が存在しているのかどうかで変わってくるため、注意が必要です。

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代襲相続となる場合

ではさらに、父親が亡くなった時に子どもがすでに先に亡くなっていた場合、法定相続人はどうなるのでしょうか?

被相続人の子どもに子ども(孫)がいたら、その孫が代襲相続によって相続人となります。この場合の孫は法定相続人ですが、代襲相続をするので代襲相続人と言われます。

代襲相続人の法定相続分は、被代襲者(上記例では子ども)と同じになります。代襲相続人が複数いる場合には、代襲相続人の人数で頭割り計算をします。

たとえば、もともと法定相続分1/2の子どもが父親より先に死亡、代襲相続で孫2人が相続人となったとします。この孫の法定相続分は、1/2×1/2=1/4ずつとなります。

代襲相続人になれるのは、被相続人の子どもや孫、ひ孫などの直系卑属ですが、被相続人より先に子どもも孫も亡くなっていた場合には、ひ孫が代襲相続によって法定相続人になることができます。

また、兄弟姉妹の子どもである甥や姪も代襲相続人になることができます。ただし、兄弟姉妹の場合の代襲相続は「一代限り」となり、甥や姪の子どもは代襲相続人になることができません。ということは、被相続人より先に兄弟姉妹も甥姪も死亡していた場合には、甥姪の子どもは相続人になることができないのです。血縁関係が薄くなると相続できなくなっていきます。

それから、被相続人より親が先に亡くなっている場合です。これは祖父母が相続人になり、両親も祖父母も先に亡くなっていた場合は、曾祖父母が相続人となります。

これは代襲相続ではありませんが、法定相続人の順位に基づいた相続人への繰り上がり方としては、代襲相続と同じことです。

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おじ・おば・いとこなどの親族が相続する場合

第1順位から第3順位に含まれない親族(おじ・おば・いとこなど)は法定相続人になれるのでしょうか。たとえば、身寄りのない自分の唯一の親族がいとこであった場合です。

配偶者がいない→子どもがいない(第1順位)→親がいない(第2順位)→兄弟姉妹がいない(第3順位)。ということで、唯一の親戚・いとこが相続できるのでしょうか?

実はこれはさすがにできません。ただし、遺言書に名前があったり、特別縁故者と認められる場合は、相続人として認められる場合もあります。遺言書がある場合にはその遺言書の内容が優先されます。

法定相続人を決める時は、民法で定められたものであるため、たとえ相続を放棄した人がいたとしてもその数が変わることはありません。実際の相続人と法定相続人の数が違うこともありうるのです。

また、生前贈与などの相続対策においても、法定相続人を正確に把握しておくことが大切ですので、法定相続人の対象者・順位・数をしっかり把握しておきましょう。

相続するかの意思表示には期限がある

相続には期限があります。被相続人(亡くなった人)のお通夜やお葬式に集まっている親族の中には、被相続人が死亡したことにより、自分が相続人(遺産を受け取る人)の一人であると知っている、あるいはその場で初めて知った家族などがいます。

そもそもその遺産を相続するには「相続します」という意思表示が必要なのです。この被相続人の死亡から相続人の意思表示までには期限が設けられています。

それが「自分が相続人になったことを知った時から3ヵ月以内」となっており、この期限を「熟慮期間」といいます。相続人はこの3ヵ月の熟慮期間のうちに、相続するかどうかの意思表示が必要になります。

遺産を相続するにあたって注意しておきたいこと

遺産相続に関する意思表示には3種類(単純承認・限定承認・相続放棄)がありますが、ここでは簡単にお伝えしましょう。

単純承認

財産も借金などもすべてを相続します。また、次の場合にも単純承認したとみなされます。

(1)相続人が、相続財産の全部や一部を処分したとき
(2)相続人が、熟慮期間(自分が相続人なったことを知った時から3ヵ月)以内に限定承認・相続放棄の手続きを取らなかったとき
(3)相続人が、限定承認・相続放棄をしたあとでも、相続財産の全部や一部を隠したり、私的に使ったり、相続財産と知っていながら財産目録に記載しなかったとき

限定承認

相続する借金などが、相続する財産よりも多い(債務超過)時に、相続人が被相続人から承継する相続財産の限度で、被相続人の借金などの支払いをする限度付き相続です。

相続放棄

相続人が家庭裁判所へ申し立てをし、相続放棄が認められると「最初から相続人でなかった」として扱われます。例えば、債権者が取り立て(支払い督促)に来ても、支払う必要はありません。

この負債の相続には、借金だけでなく連帯保証債務も含まれ、何かの連帯保証人になっている場合にも対応できます。

遺産を相続しない場合も明確な意思表示を

相続放棄は「最初から相続人でなかった」として扱われますが、それと似た言葉で財産放棄があります。

これは相続人同士の間で、「わたしは財産を相続しません」と決める手続きです。

遺産分割協議書」という、個々の相続財産についてそれぞれどうするかという書類を作成し、各財産について相続するかしないか、意思表示をします。もし遺産分割協議終了後に財産があることが判明した場合、その財産についてどうするか、再び話し合う必要があります。

親族間で、たまに「自分は財産はいらない。他の兄弟ですべてわけてくれ」と口頭で話し合うだけのケースもありますが、裁判所に相続放棄手続きを申請していない場合には、意味がありませんので要注意です。

また、被相続人に負債(借金や連帯保証など)がある場合、債権者からの請求を止めるためには「相続放棄」手続きでないと債権者からの請求を止めることができませんので気を付けましょう。

計画的な相続のために「相続順位」を理解しよう

生前に相続対策をするという前提で考えると、誰がどういう順番で法定相続人になるのかということを把握しておかないと、計画的な相続ができなくなってしまいます。

事前にある程度知っておいた上で、相続人である大切な家族と、これからの生活のこと、これからのお金のこと、色々と話しておくのは大切なことです。

難しいと感じたら、ファイナンシャル・プランナー(FP)や弁護士・司法書士などの、相続の専門家に相談するのもおすすめです。相続が発生してから対処するのではなく、家族や相続人で話し合う機会をつくることが円満な相続の第一歩になるのではないでしょうか。

※本ページに記載されている情報は2021年2月4日時点のものです

野原 亮(のはら りょう)

明治大学政治経済学部経済学科卒業。現東証1部上場の証券営業・株式ディーラー・営業コンサル会社を経てFPとして独立。確定拠出年金制度のみならず、生きる知恵としての総合的な金融研修の継続実践を通じて、中小企業の福利厚生の充実を図り、従業員の不満足度を下げ、中小企業のコスト削減から人材獲得、成長維持に貢献することを目指している。2020年『1時間でわかるiDeCo~50代からの安心投資』出版。